「お菓子はプロダクトブランドと企業名の結びつきが低いカテゴリーだと言われます。けれど、羽生選手がいてくださることで、キシリトールはロッテ、ガーナはロッテという認知が広がった。ロッテの製品ブランドと企業ブランドをつなげる意味でも貢献していただいたように思っています」

羽生結弦はCM撮影でも高みを目指す


 契約期間中、羽生さんはCM撮影などにも真剣に向き合っていたという。

「当時、撮影に立ち会った者からは、リンクに入ると表情が一変するという話や、スタッフが『十分素敵な映像が撮れた』と言うときでも羽生選手ご自身が納得なさらず『もっとよくできる』と、より高みを目指されたという話を聞きます。その姿勢に触れる中で、私たち社員もさらに羽生選手のファンになっていきました」

 ロッテは、北京五輪後の2022年2月27日に「羽生選手が教えてくれたこと。」という企業広告を読売新聞に出稿した。読売新聞の東京本社や大阪本社など6支社版で、それぞれモノクロの写真が異なった。

「羽生選手が教えてくれたこと。」「WE RESPECT YOU.」が共通のコピー。それに加えて「自分の言葉で語る人を、誰も無視できない。(西部本社版)」「勇気ある人だけが、高く跳べる。(大阪本社版)」「愛されるということが、いちばん強い。(中部支社版)」といった文言が紙面の隅に添えられた。

「長年にわたるお付き合いのお礼を当社から羽生選手に申し上げた際には、『羽生選手が教えてくれたこと。』や、2019年の『GUM FOR THE GAME』という広告で、『ロッテがアスリートとしての自分を応援してくれていることが伝わってうれしかった』と言ってくださったそうです。また何かご一緒できる機会があったらうれしいなと思っております」

 SNS上を賑わせた羽生さんの「チョコパイ」発言。ファンの反応までを含めて、かつての広告契約企業と広告キャラクターの理想的な関係を思わせるものだった。(山本 舞衣:『週刊東洋経済』編集者)