平野克己著『人口革命 アフリカ化する人類』(朝日新聞出版)※本の詳細をAmazonで見る
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 たとえば、味の素は1980年代からナイジェリアに進出してBOP市場を耕し、アフリカ農村ではなくてはならない商品になりました。同社には、味の素という商品は本来BOP向けであり、その意味でグローバル商品だという確固とした認識があるからです。だから貧しくて人口の多い地域に、政治情勢にかかわらず進出した。これがグローバル企業のメルクマールです。

『人口革命 アフリカ化する人類』は、世界経済史の大前提でありながら、特にアフリカに関してはこれまで詳しく検討されてこなかった死亡率や出生率などの人口動態について、食糧事情と共に考察したものです。「今世紀中頃には人類の4人に1人がアフリカ人になる」という国連予測はあちこちで引用されますが、誰もその真偽を検討していない。国連予測にはあるバイアスがかかっており、そのバイアスを除くと2080年代には人類の半分がアフリカ人になるというのが、本書の一つのメッセージです。

 なにが出生率を動かしているのかは、誰も解けていない謎です。日本社会を悩ましている人類普遍のこの謎に、アフリカ研究の立場から挑みました。グローバルな視点を磨き上げる一つの縁は人口論です。そこから、アフリカとその他世界を分かつ最大の相違が見えてくるのです。