平野克己氏(撮影/写真部・高橋奈緒)
平野克己氏(撮影/写真部・高橋奈緒)

 インフラにしても中国企業は他国の半分の値段で作っています。中国が作るインフラは質が悪いと言われますが、彼らは現地に合わせたものを作っているだけで、その意味では決して悪くない。さらに企業の規模も、もはや日本のゼネコンとは比べものにならないくらい巨大になっています。つまり、世界最大の製造業大国、輸出大国に成長した中国の姿が、2000年代初頭から先行的にアフリカに現れたということです。

 しかしながら一方で、中国共産党は民間企業が勝手に動くことを極度に嫌がります。そこはこれから弱みになっていくでしょう。たとえば、アフリカで一番人気のある中国人は習近平ではなくジャック・マーです。その超有名人を中国政府は表舞台から外してしまった。

 こう考えると、中国のアフリカ展開の先行きはそんなに明るくない。要するに20世紀東アジア型の開発で、時代遅れなんですね。今の中国のやり方は、かつての日本の、高度成長期やジャパン・アズ・ナンバーワン時代のやり方の大型版ですから、必ず終わりがくる。今のやり方では最終的には勝てないと思います。アフリカ経済の主導権を握っているのは、政府ではなく企業だからです。

■日本企業がアフリカで生き残るためには

 だからと言って日本企業が勝てるのか。残念ながら答えはノーです。日本は、対アフリカ貿易も投資も減っていて、中国や先進諸国はおろかインドや南アフリカといった新興国にも抜かれ、もうアフリカ経済におけるメインプレイヤーではなくなっている。

 アフリカに浸透しているのは、日本という国名ではなく企業名です。ただし、その数は多くない。たとえば日本の家電製品は、かつてはどの国でも市場にあふれていましたが、今はほとんど見かけなくなっています。日本の輸出の半分は自動車で、「日本製品は壊れない」というイメージを日本車が支えてくれています。

 日本企業のアフリカ担当者からはよく、アフリカ各国の経済成長率の見通しを聞かれます。しかし、こういったマクロ経済指標は政府が経済政策を策定するためのもの。企業はミクロ経済のプレイヤーです。ビジネスにとって重要なのはミクロな市場情報のはずです。

次のページ