※写真はイメージです。本文とは関係ありません
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「友だちと出かけた先で、母親の同級生に会うとか知り合いに見られているとかもしょっちゅうで、『レナちゃん、来てたわよ』というのがウチにまで伝わってくる。デートをしたくても誰かに見られて、親にも知られるかもしれない……と考えると、出かけるのもためらわれますよね」

 いたるところに大小さまざまなしがらみがあって、行動するたびそれに引っかかる。作中での真実も、人間関係はすべて地元で築いてきたものだった。職場でも、お見合い相手と出かけたショッピングセンターでも、古い知り合いに出会う。

 レナさんは、大学進学を機に上京した。祖父は「女の子には学問はいらん!」と言っていたが、両親の考えは違った。

「地元では、女性の働き口が少ないんです。ほとんどが非正規雇用だし、正社員でも給与が信じられないほど低い。女性がひとりで生活をすることが想定されていないんでしょうね。そこそこのお金を得るとなると医師、看護師、薬剤師などの医療関係か、教職以外にない」

 女性は人生の早いうちからそれを知り、人生の選択を迫られる。

「高校生のとき進学を考えるにも、女子は『あの学科にいって、あの資格を取って、将来はあの職業に就く』って具体的な想定をしている子が多かったと思います。男子はもっと漠然としていたけど、きっとそれでもなんとかなるんですよ。私は大学進学時に奨学金を利用することになっていたので、地元の大学に進み地元で職に就くと将来きっと返済に困るだろう、という考えが両親にもあったようです」

 作中の真実は、県庁勤めとはいえ臨時職員だった。契約は1年更新。経済的に困ることはなさそうだが、それは親元で暮らしているからだろう。

 女性と職の問題は、結婚とも無関係ではない。

 モモエさんは職場で、複雑な思いに駆られたことがある。「仕事がデキる」と評判の女性がいた。年のころは30歳手前。上司の覚えもよく、同僚や後輩からも人望があるが、昇進することはない。そんな彼女が辞表を出したと聞き、モモエさんは耳を疑った。しかも結婚を機に辞めるのだという。

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前時代的なセリフに驚きつつも、気持ちも理解できる