松本人志
松本人志

4月30日に放送された松本人志と中居正広がMCを務める新番組『まつもtoなかい』(フジテレビ)に香取慎吾が出演したことが話題になっている。中居と香取は、言わずと知れた国民的アイドルグループ「SMAP」の元メンバー同士であり、テレビでの共演は実に6年ぶりになるという。

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この歴史的な共演の場で、松本が興味深い発言をしていた。芸人である自分にとって「SMAPは脅威だったからね」と述べて、以下のように語ったのだ。

「俺はお笑いだから、お笑いの人たちと戦って勝っていかないといけないと思ってたからね。そんなときにSMAPっていうのが出てきたときに、あ、エンターテイナーの本物が来たな、この子ら、笑いもやんねやと思ったら、敵はお笑い芸人じゃないぜと本当に焦ったよね」

この松本の「SMAP脅威発言」は、90年代中盤のお笑い界・バラエティ界をリアルタイムで見てきた者からすると、深く納得できる話である。しかし、そうではない人にとっては、芸人である松本が当時なぜアイドルのSMAPをそれほど脅威に感じていたのか、ということがよくわからないかもしれない。この点について、時代をさかのぼって説明をしていきたい。

90年代前半のテレビ界では、とんねるず、ウッチャンナンチャン、ダウンタウンの「お笑い第三世代」が猛威を振るっていた。彼らはフジテレビのゴールデンタイムにそれぞれ『とんねるずのみなさんのおかげです』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『ダウンタウンのごっつええ感じ』という冠番組を持っていて、その中でコントを演じていた。いずれもテレビの歴史に残るような大ヒット番組であり、彼らはここを拠点にしてテレビスターとして君臨していた。

この3組に共通するのは、多くの女性ファンから熱狂的な支持を受けていたことだ。その意味では、若い頃の彼らは限りなくアイドルに近い存在だった。

芸人のアイドル化が進む一方で、本物のアイドルたちは苦戦を強いられていた。お笑い番組が人気を博す一方で、音楽番組が減っていき、アイドルが大々的に新曲を発表する場がどんどん失われていった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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