怪物1年生の清宮 (c)朝日新聞社 @@写禁
怪物1年生の清宮 (c)朝日新聞社 @@写禁
俊足のオコエ (c)朝日新聞社 @@写禁
俊足のオコエ (c)朝日新聞社 @@写禁

 そこにいるはずのない清宮幸太郎(16、早稲田実)の姿があった。

 U18ワールドカップ(W杯)に出場する高校日本代表が集合した8月22日。甲子園でベスト4に進出したチームの選手は、翌23日の合流とされていた。ところが、20日に帰京していた清宮は急遽とんぼ返りし、合宿初日から参加したのだ。

「じつは明日からでいいとは知らなくて(笑)。たくさん高校球児がいる中で、1年生の僕を選んでもらった。一日でも長くやれるほうが楽しいので今日来られてよかった」

 何とも健気で、天然であり大物である。

 甲子園には、怪物1年生を一目見ようと大勢のファンが詰めかけ、朝6時の段階で甲子園のチケット売り場から阪神・甲子園駅まで長蛇の列ができていた。早実の試合が第1試合ばかりだったため、観客を動員するために、また警備の手配をしやすくするために、早実の試合が第1試合になるよう高野連が仕組んでいるのではないか、とさえ噂された(毎試合後に厳正に抽選が行われるためそんな事実はない)。

 清宮は甲子園で19打数9安打を放ち、2本塁打8打点を記録した。パワーに頼らず、リストをうまく使って、身体の回転で打球を遠くに飛ばすのが清宮のバッティングである。大会中はインコースを執拗に攻められたが、準々決勝・九州国際大付との試合では彼らしいフォームで内角のボールを弾丸ライナーでスタンドに運んだ。

 期待値をはるかに上回る数字を残し、客寄せのパンダではなく、実力で高校日本代表を勝ち取った。

 清宮と共に甲子園をわかせたニューヒーロー、関東一のオコエ瑠偉も選出された。ナイジェリア人の父と、日本人の母との間に生まれた彼は、50メートル5秒96という俊足の持ち主。初戦の高岡商戦は一塁強襲の“二塁打”を放ち、三回には1イニングに2三塁打。甲子園の歴史で、ここまで“足”で魅せた選手はいまい。

 さらに準々決勝の九回には2点本塁打を左翼席に運び、バットを放り投げて雄叫びをあげた。将来の夢はメジャーリーガーで、米国スカウトも訪れるW杯は格好のアピールの舞台だろう。

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