特務機関NERVがツイートした、大阪北部地震の震度を伝える画像。気象庁の情報をもとに、カラーバリアフリーに配慮した画像を自動で生成する(ゲヒルン提供)/「特務機関NERV」のツイッターアカウント https://twitter.com/un_nerv
特務機関NERVがツイートした、大阪北部地震の震度を伝える画像。気象庁の情報をもとに、カラーバリアフリーに配慮した画像を自動で生成する(ゲヒルン提供)/「特務機関NERV」のツイッターアカウント https://twitter.com/un_nerv

 人気アニメシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する組織「特務機関NERV」を名乗るツイッターアカウントがある。どこよりも早く地震速報などを発信するこのアカウントは、一体だれが、何のために運用しているのか。

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「揺れを感じたら、まずはツイッターを開いて『特務機関NERV』の投稿をチェックします」

 宮城県石巻市で暮らす30代の女性はそう話す。東日本大震災からすでに7年半がたつが、依然として地震活動は活発で、いまでも年間500回を超える余震(震度1以上、東北全体)が起きている。石巻で揺れを感じたときは、地震の規模や津波の可能性を、『特務機関NERV』というツイッターアカウントの投稿でチェックするという。

 特務機関NERVとは、人気アニメシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する機関の名だが、これを名乗るツイッターアカウントがある。フォロワー数はおよそ49万9600人(2018年8月8日現在)。元SMAP3人のファンクラブ「新しい地図」の公式アカウントがフォロワー39万4000人程度、エヴァンゲリオンシリーズの公式アカウントは8万7千人程度であることを考えると、驚くべき数と言える。

「特務機関NERV」は、地震などの災害情報のほか、気象警報、電車遅延や停電といった生活情報などを速報でツイートする。内容の豊富さもさることながら、特筆すべきはそのスピードだ。例えば6月18日朝に発生した大阪北部地震。特務機関NERVは、7時58分の発生に前後して緊急地震速報と第1報をツイート。震源の深さや予想される最大震度などを次々と発信しながら、同時に「エレベーターに閉じ込められた場合」「ガスメーターの復帰方法」といった情報もツイートした。発生から2分後の8時ちょうどには「大阪北部:震度6弱」をはじめとする各地の震度も伝えている。ちなみに、日本気象協会の地震速報アカウント「tenki.jp地震情報」が第1報をツイートしたのは8時1分、NHKニュースの速報配信は8時2分だった。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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