バルミューダどんなパンでもバターと小麦の香りが広がるスチーム機能を発揮するために、上部給水口から小さじ1杯分の水を入れる。冷凍パン、クロワッサン、フランスパンにもその能力を存分に発揮する(撮影/写真部・加藤夏子)
バルミューダ
どんなパンでもバターと小麦の香りが広がる

スチーム機能を発揮するために、上部給水口から小さじ1杯分の水を入れる。冷凍パン、クロワッサン、フランスパンにもその能力を存分に発揮する(撮影/写真部・加藤夏子)

 モノが売れない時代でも、爆発的に売れている商品がある。ヒットを飛ばす人たちはどんな工夫をし、どんな思いで売っているのか。2万円超の「高級トースター」の場合は、こうだった。

 トースターなんてパンが焼ければいいだけ。機能も、メーカーごとに大きな違いはない。だから、安いものでいい。いまや価格帯の底値は2千円前後だ。「枯れた技術」とさえ呼ぶ人のいるトースターという領域に、ベンチャー家電のバルミューダは切り込んだ。

「バルミューダ ザ・トースター」。価格は税込みで約2万5千円。高価格だが、どんなパンでも「お店の焼きたて」を実現する機能が「魔法」「革命」と絶賛を浴び、売れに売れている。昨年6月の発売後、初回生産の2万台が1カ月も経たずに完売。現在までに10万台以上が売れ、客注商品を生産するだけでやっとの状態が続いている。

「創業以来ダントツの売り上げ」と言うバルミューダの寺尾玄さん(42)は、異色の経営者だ。

 高校を中退し、欧州を放浪。ミュージシャンを経て、2003年に起業。大手メーカーの汎用品とは違う商品をつくるのがコンセプトだ。10年には、自然界の風を再現する「グリーンファン」を発表し、扇風機の世界に革新を起こした。ただ、どの商品も当たったわけではない。より「違い」が実感できる商品を目指し、今回のトースターのヒットが生まれた。

 食パンを1枚焼いたら、違いがよくわかる。スーパーで買ってきた食パンを3分で焼き上げると、バターと小麦の香りが鮮やかに広がる。外はカリッ、中はふんわりの食感はエンターテインメントですらある。

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