エキシビジョンを終えて言葉を交わすハビエル・フェルナンデス(左)と羽生結弦。ライバルではなく仲間の顔だ (c)朝日新聞社 @@写禁
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エキシビジョンを終えて言葉を交わすハビエル・フェルナンデス(左)と羽生結弦。ライバルではなく仲間の顔だ (c)朝日新聞社 @@写禁

 中国・上海で行われた世界フィギュアスケート選手権。ブライアン・オーサーの門下生2人が1位と2位を占め、チームの強さを見せつけた。

 チーム・ブライアンの“完勝”といえる世界選手権だった。男子シングルで、ハビエル・フェルナンデス(23、スペイン)が初優勝。連覇を目指した羽生結弦(はにゅうゆづる)(20)が2位。16歳のナム・グエン(カナダ)も5位につけた。いずれも、ブライアン・オーサーの門下生だ。その夜、羽生は思わず言った。

「改めて、僕たちは最高の環境で練習しているんだなと感じました。トロントのブライアンのチームは、全部の選手とコーチが一緒になり、全体で高いレベルの練習をする。それをまとめるブライアンもすごい」

 今季は衝突事故や手術、右足首の捻挫など、いくつものトラブルに見舞われた羽生。昨年12月に全日本選手権を制したあとは、カナダ・トロントのチームには合流せず、仙台で自主練習をしながら世界選手権を迎えた。

 会えない師弟は、頻繁にメールをやりとりしながら練習を進めた。まず、オーサーが詳細な練習計画を羽生に送った。ジャンプの修正には、今季の中国杯やGPファイナルの映像を使い、トロントと仙台、それぞれの場所で見ながら、「空中での回転軸が左に傾くときは、跳び上がりでこんな傾向がある」などと分析しあった。メールでのコミュニケーションは、羽生が、「英語で状態を伝えるのは大変でしたが、不安要素は、多少のタイムラグがあることくらい」と振り返るほどうまくいき、本番前には4回転が完璧に決まる状態になった。

 オーサーにとっては、ショート終了時点で羽生とフェルナンデスが1、2位を独占できるかどうかが最大のヤマ場だったが、計画通り、愛弟子2人はショートで1、2位となり、順位は入れ替わったものの、そのまま金銀を独占した。

 羽生は今大会をこう振り返る。

「手術からの回復という、未知の状況のなか自分がどこまでやれるのか分からず、少なからず焦りはありました。でも今回、絶対に成長できたところがあって、それを見せられたと思うので、今の状況なりのベストな練習ができたんだと思います」

 そして、こう誓った。

「目の前にハビエルがいれば、負けた悔しさが消えることはない。来季は、悔しさをバネにして練習できる」

AERA  2015年4月13日号より抜粋