米スタンフォード大など世界の有名校の講座を電車の中でも無料で学べる。英語力も身につく(写真部・植田真紗美)
米スタンフォード大など世界の有名校の講座を電車の中でも無料で学べる。英語力も身につく(写真部・植田真紗美)

 世界の有名大学の講義を無料で聞けるオンライン講座が、今「革命的」として注目されている。

 電車内でタブレット端末を見る都内の会社員、若井幸夫さん(29)。海外の有名大学授業の課題を読む。

「いつもながら大変。年末年始はムークとにらめっこですよ」

 と話す声のトーンは明るい。この9カ月で社内評価は上がり、TOEICの点数も学生時代に比べて100点以上伸びた。

 ウェブ上で大学の講義を無料配信する大規模オンライン講座、通称「ムーク」(MOOC=MassiveOpen Online Courses)。主な運営サイトは「Coursera(コーセラ)」「Udacity(ユダシティー)」「edX(エデックス)」の三つ。最大のコーセラの履修登録者はのべ570万人を超え、毎日約1万人増えている。

 大学授業の「動画」を公開する動きはこれまでもあったが、「生徒に宿題を出し、テストを行い、履修証を出す、まさに『授業』を公開したところが革命的に違う」と東京大学の山内祐平准教授は話す。東大も9月に国内で初めてムークに参入、人気教授の授業を公開して世界中から受講者を集めているという。

 主要3サイト以外に英国、中国、フランスでローカルサイトが発足または準備中で、日本でも来春「Jムーク」が始まる。

 ムークは、ビジネスパーソンのスキルアップツールにもなる。冒頭の若井さんは入社5年目を前に一念発起。4月からコーセラのデータ解析業務に関する授業を二つ履修した。片道40分の通勤時間にiPodにダウンロードした授業の音声を聴き、キンドルにダウンロードした授業のテキストを読み、週末には提出課題に取り組んだ。上司に随時報告していたところ、ビッグデータ関連の新プロジェクトメンバーに選ばれた。

「この業務をやりたいという思いを空手形でなく行動で示せた点で説得力はあったと思う」

AERA 2013年12月30日-2014年1月6日号より抜粋