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日本の女性の生き方、働き方が劇的に変わろうとしている今、女子大学が改めて存在感を示している。女子学生の教育、就職・キャリア支援を通じて「女性の未来」を考え続けている女子大学7校と、女性が活躍している企業4社が、語り合った。
文/石川美香子 撮影/楠本 涼 イラスト/山中玲奈 デザイン/スープアップデザインズ
企画/AERA dot.ADセクション 制作/朝日新聞出版 カスタム出版部
長年、女子学生を育て、社会に送り出してきた女子大学。その「強み」はこの変革期に、どのように生かされるのか。女子大学で学ぶ意味、女子大学ならではのサポートとは?
※座談会出席者のお名前は敬称略で記載しております。
片桐圭子(AERA編集長) 学生の就職に対する意識は、最近変化してきていますか? 大学としてどのようにサポートされているのでしょうか。
坂東眞理子さん(昭和女子大学) 私たちは1年次からキャリア教育に力を入れています。やはり女性の場合は男性よりも、長い人生の中で家庭と仕事でどう折り合いをつけていくのかが課題となりやすい。しっかりとした将来展望を持ってキャリアをデザインする力を養う教育をしています。その結果、「人生を通して仕事を続けたい」「一生続けられる仕事に就きたい」という学生が着実に増えてきています。
回答企業1万1,732社のうち、政府目標である「女性管理職30%」を超えている企業はわずか7.5%だった。
帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」(2020年)
お茶の水女子大学 学長
室伏きみ子氏
川並弘純さん(聖徳大学・聖徳大学短期大学部) 私たちの大学も短大もそうですが、保育士や教員など専門職の資格を取って卒業する学生たちが多く、就職率もほぼ100%(2019年度卒就職率 大学99.6%、短期大学部98.9%)です。10年程前より「自立するチカラをはぐくむ女性総合大学」として、課題解決力やチームワーク力、コミュニケーション力など総合力を高める教育に力を入れてきました。さらに、7年前からは「聖徳夢プロジェクト」というキャリア教育プログラムもスタートさせました。結果として、学生自身が以前よりも自分のキャリアを熱心に模索するようになり、一般企業への就職や公務員になろうという意識を持つ学生が非常に増えてきています。
室伏きみ子さん(お茶の水女子大学) 私たちの大学では、どんな仕事をしたら自分の役割を果たせるかというイメージや、企業とのマッチングもしっかり確認したうえで就職を考える学生が多いです。学生の職業選択の幅を広げるため、企業や公的機関の力も借りながら、キャリア形成のための多数のプログラムを開発してサポートしています。起業を目指す学生向けに「次世代アントレプレナー育成事業」も展開しており、起業家も少しずつ生まれてきています。
片桐(AERA) 企業での、女性の働き方や、女性に求める人材像はどのようなものですか?
齋藤沙貴さん(サントリーホールディングス) 今のように変化の激しい時代においては、男女にかかわらず、何事にも柔軟に対応できる姿勢が求められていると思います。かつ、主体的に目標を掲げて、自分で考え、達成するまで諦めずにやり遂げられる人材が活躍しています。ここ数年、“ライフ”と“ワーク”の両立を意識して、その中でいかに自己実現しようかと考える女性が増えてきている実感があります。女性は男性よりもライフの影響を受けやすいので中長期のキャリアに対する意識をより強く持っていくことが大事だと思います。
昭和女子大学 理事長・総長
坂東眞理子氏
坂田裕実子さん(アクセンチュア) この5年ほどは働き方改革によって、男女問わず育休取得の推進など、サポート制度の強化が実際の現場レベルで進んできているなと感じています。環境的にも私が入社した2002年以降も女性社員の数は増加傾向にあり、今では35%強。もう、女性はマイノリティではありません。女性管理職も増えてはいますが16%程度。30代前後でマネジャーという管理職の入り口に立つことになりますが、そのときに引いてしまわずに前に出る意識を持った女性を、広く育成していきたいです。また、IT業界は女性がまだ少ないと思うので、ITに強い女性をもっと輩出したいですね
坂東(昭和女子) 女性が管理職に就くのをためらう背景には、本人だけでなく周囲にも男女の役割意識に対するアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があるんですね。例えば、女性が子育ても家事も介護も全部やらなきゃいけない、と思い込んでいる人はまだ多いですが、世界的に見ると、活躍している女性の多くは家事も子育ても夫や家族とシェアしながら公私の保育支援を利用するなど、いろんな人に助けを求める〝救援力〟を持っています。日本の女性もこうしたマネジメント力を身につけて能力を発揮していくべきです。そのためにも女子大学で学び、アンコンシャス・バイアスから解放されることは有益だと思っています。
聖徳大学・聖徳大学短期大学部
理事長・学長
川並弘純氏
片桐(AERA) 女子大学でこそアンコンシャス・バイアスを取り除けるということですか?
室伏(お茶の水女子) すべてのことを女性だけで運営・管理して考え、情報交換し、生き方のロールモデルとなる卒業生の意見を聞く。そういう機会は共学より女子大学の方がはるかに多い。だからこそあらゆるアンコンシャス・バイアスから解き放たれて、自由に自分の特性を伸ばせる場所だと考えています。自分の特性を見極め、お互いの違いを認め合って助け合うことが、新しい時代を拓き、平和で豊かな人類社会を作っていくうえで大事なのだということを、身をもって知ることができます。
川並(聖徳) 女性だけの環境でこそ、その特性をより伸ばせるというのは、キャリア教育プログラムを通じて強く感じています。アクティブラーニングでも、異性の目があると意識してしまい、意見を言えないことが実際にはまだあります。まずは同性だけの環境で、積極性や発言力を伸ばすことが、自信につながり社会に出たときに役立ちます。また、本学には大学同様の学習成果を望める短大もあります。多様化する時代では、2年早く社会人生活をスタートできる短大という選択肢があることも、キャリアデザインのひとつとして大切なことと捉えています。
アクセンチュア
製造・流通本部 マネジング・ディレクター
坂田裕実子氏
片桐(AERA) 女子大学だからこそ身につけられる多様性があるわけですね。企業から見て、その点はいかがでしょうか。
坂田(アクセンチュア) 女子大学での学びを通じてアンコンシャス・バイアスに縛られずに社会で活躍できるようになる、自分が先頭に立ってリードすることに対しての変な抵抗感がなく、ごく自然にそれをすることができる。これは素晴らしいことですね。
齋藤(サントリー) 私たちが会社として目指す姿とは、個性あふれる多様な人材を獲得し、そうした個人が交わり合ってイノベーションを生み出し、社会に貢献していくというものです。前向きさやチームワーク、感謝の心、柔軟性なども重視しながら、いろいろなバックグラウンドを持つ多様な学生を採用していきたい。そうした観点でも女子大学出身というのはひとつの強みになると思います。
政治、経済、教育、健康の4分野で14項目を調査し、男女格差を指数化したランキング。昨年発表分では153カ国中121位で過去最低だった。
世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2020」(2019年)
片桐(AERA) 坂田さんは女子大学出身ということですが、「大学時代のこんなことが今の仕事や人生に役立っている」と感じることはありますか。
坂田(アクセンチュア) 大学時代は、生物学科で少人数だったこともあり、自分で考えて行動を決める場面や、自分の意見をきちんと伝えなければならない機会が多くありました。その経験が社会人になった今も生きています。やはり、多様性を尊重するためには、相手の立場や意見に配慮しながらも、自分自身で考え、意見をしっかり持つことが起点になると感じています。アメリカでは今、初の女性副大統領が誕生しそうだということが注目を集めていますが、弊社でも昨年9月に、初の女性CEOが就任しました。女性がガラスの天井を破って活躍するには、女性自身の意識や主体性も大事だなと感じています。
性別によって子育ての仕方を変えるべきと考える割合は近年で減ってきてはいるが、直近のデータで女性では4割、男性では6割以上がジェンダー意識に縛られている。
内閣府「男女共同参画白書 令和元年版」
坂東(昭和女子) 入学当初は自分の能力を過小評価している学生も多いんです。「リーダーズ・アカデミー」でも最初は自分に自信のない学生が多いですが、チームの人たちの力を引き出す支援型のリーダーシップでは女性も能力を発揮しやすい。まずはしっかりと自分に自信を持てるような環境を大学の中に作っていくこと。そして、学生たち自身で小さな成功を体験する。それによって自己効力感を高め、やればできるのだといった経験を少しずつ積み重ねていくことが大事です。また、「社会人メンター制度」など、実際に社会で活躍している女性からアドバイスを受けることも大きな励みになっています。来年から社会人大学院を開設し、一生、母校は母港として卒業生を応援します。
サントリーホールディングス
人事部
齋藤 沙貴氏
片桐(AERA) 日本は今、ジェンダー・ギャップ指数121位ですが、この状況については、どのようにお考えでしょうか。
川並(聖徳) これは社会システムも含めた、非常に根深い問題だと思っています。私たちとしては、教職員に積極的に女性の登用を考え、学生たちに身近なところで、女性たちの活躍ぶりを見てもらうという機会を作っています。女性として精神的に経済的にどう自立していくのか、または、そういう心をどう持ち続けていくのか。小さな灯でありますけれども、学生たちの心の中に火をつけて卒業させていきたい。短大も4年制大学も私たちは卒業していく学生たちの心の火〝自立〟についてこだわっていきたいと考えています。
齋藤(サントリー) ジェンダー・ギャップは今後、解消していくべきだと思いますし、社内でも無意識のバイアスをなくす取り組みをしています。変化の激しい時代の中では、より社員一人ひとりの「個人」が強くなっていく必要があると感じています。誰もが自分のキャリアを主体的に考え、デザインしていくことが重要ですね。
室伏(お茶の水女子) ジェンダー・ギャップ指数121位というのは、世界に向けて非常に恥ずかしい数字だと思っています。ただ、生物学的・社会的な「性」を、科学的に見ると、「男女」という二つに分けきれないスペクトルの広いものだということもわかってきました。私たちは日本の女子大学では初めて、2020年度からトランスジェンダーの学生(戸籍またはパスポート上は男性だが性自認が女性である人)の受け入れを開始しました。学内だけでなく、当事者、LGBTに関する研究者も含めた話し合いを2年ほど重ねましたが、学生からは「お茶の水女子大学の学生であることを誇りに思う」という声も聞かれました。多様性を包摂する女子大学として、未来を担う若い人たちの意見を大事にして、今後も様々な支援をしていきたいと思います。
『AERA』編集長片桐 圭子
女性の生き方や働き方を応援し続けてきたAERAとしては、日本のジェンダー・ギャップ指数が153カ国中、121位という現実に暗澹たる気持ちになっていました。でも、今回の座談会を通して、志を同じくする女子大学や、女性が活躍している企業の皆様の存在を身近に感じられたことは、今後誌面を作っていくうえで大きな力になります。
1875年の創設以来、常に社会に必要とされる高度な教養と専門性を備えた女性リーダーを育成し、女性のライフスタイルに即応した教育研究のあり方を開発・実践している。教職員と執行部における女性の割合も全国的に見て高く、学ぶ意欲のあるすべての女性たちの夢の実現のために尽力する。
(国公私立大学278校中)
(『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』発表)
建学の精神「世の光となろう」のもと、グローバルに通用する力を持った女性人材を育成している。2019年秋に州立のテンプル大学ジャパンキャンパスが大学の敷地内に移転し、スーパーグローバルキャンパスを実現。両校の学位を取得するダブルディグリー制度や共同授業だけでなく、学生同士の交流も盛んに行っている。
全国の大学中5位(2020年)
(卒業生1000人以上の大学)(大学通信調べ。2011年〜2020年)
建学の精神「和」のもと「人間教育」「女性教育」を柱に教育を展開する女性総合大学。自らに挑戦し続ける強さと他者への優しさを兼ね備えた女性の育成をめざす。一人ひとりのキャリアデザインの実現を全学体制で支援。企業のほか、教育・福祉・医療の現場に多くの人材が輩出している。
(『大学ランキング 2021』朝日新聞出版発行)
詳しくはこちら>インクルージョン&ダイバーシティを経営戦略として掲げ、アクセンチュアで働くすべての人に平等な環境を提供することを目指している。日本では2006年から、女性が最大限に能力を発揮できる職場環境を目指し、経営・人事・現場が一体となり支援制度の導入、研修、イベントなど様々な活動を展開。現在はワーキングペアレンツ支援プログラムなどジェンダー平等を目指す取り組み全体を推進している。
(自社調べ。2020年9月時点)
詳しくはこちら>“女性が働きやすい環境”を整えるだけでなく、育児など、長期的に働くにあたって起こり得るライフイベントも乗り越え“女性が自信を持ってイキイキと活躍し、成果を上げている会社”となることを目指している。「2030年までに女性管理職比率を30%まで高める」ということを具体的な目標に掲げ、「働きやすい環境の整備」「女性のキャリア意識向上」などにも意欲的に取り組んでいる。
(「えるぼし(3段階目)」「プラチナくるみん」ともに厚生労働大臣認定。
※サントリーホールディングス株式会社取得)