森友学園、加計学園、自衛隊の日報問題、金融庁の報告書の受け取り拒否、財政審の意見書の言葉隠し……。公的な文書の改ざんや隠蔽は、書こうと思えばまだまだある。それがどんなに危険なことであるか。どんなに愚かなことであるか。

 権力者への過剰な忖度もそうだ。この国は戦後、陸海軍や内務、外務、大蔵各省など、日本のあらゆる組織が公文書を焼いてしまった。当時の閣議でそうせよと決めたことだ。

 その結果、戦争を美化するものや歴史修正主義者が生まれた。国が強いた個人に対する酷いことや、都合の悪い記録が消されたことは大きい。

 今は、国のために血を流せと発言する政治家まで現れた。国のことをまず考えろと。統治するものにとってその考えが浸透するのは、楽に違いない。

 そして、弱者は見殺しにされる。酷いことだと思っても、声をあげづらい世の中ができあがる。

週刊朝日  2019年7月12日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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