香港返還20年の記念式典で演説する中国の習近平国家主席=7月、香港・湾仔(c)朝日新聞社
香港返還20年の記念式典で演説する中国の習近平国家主席=7月、香港・湾仔(c)朝日新聞社

 中国のトップの習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)が、独裁色を強めている。10月18日に開幕する第19回中国共産党大会で権力基盤を整え、かつての毛沢東(マオツォートン)のように個人崇拝される対象になろうとしているのだ。中国は今や国内総生産(GDP)が米国に次ぐ世界第2位。3位の日本とは約2倍の差がある。“毛沢東化”する習政権に、日本も大きな影響が避けられない。

 中国共産党大会は5年に1度の一大政治イベントだ。今後5年間の政治体制や方向性などが決まる。習氏は2012年の前回大会で中国共産党中央委員会総書記になり、13年から国家主席、国家中央軍事委員会主席にも就いた。今回で習政権は2期目に入る。

 東京福祉大学国際交流センター長で、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』(朝日新聞出版)の著者でもある遠藤誉さんは、力の源泉をこう分析する。

「習氏ほど最初から強大な権力を持っているのは、毛沢東以来です。前任の胡錦濤(フーチンタオ)から権力をスムーズに禅譲された。胡氏は政権時に腐敗問題に苦しめられた。居座ることができた国家中央軍事委員会主席もすぐに習氏に譲ったのは、彼に腐敗撲滅を託したからです。結果的に習氏は最初から権力を集中させることができた」

 中国では習氏を「賢明なリーダー」などと、持ち上げる動きが広がっている。メディアは過去5年間の政策が成功だったと、こぞって強調。農村を訪れた際の写真なども掲載し、イメージアップに力を入れている。習氏に関する書籍も続々と出版されている。個人礼賛するような内容が目立ち、汚職摘発を口実に政敵を次々に葬っていることへの批判は見当たらない。ネット上で批判的な書き込みをしようとしても、当局に削除される。中国では「強い指導者がいないと国がまとまらない」といった考えが根強く、多くの人が習氏のやり方を支持しているという。発言が絶対視され、批判すれば命すら危なかった毛沢東の時代に近づきつつある。

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