旧宮内庁長官公邸 (c)朝日新聞社
旧宮内庁長官公邸 (c)朝日新聞社

 東京・元赤坂にある赤坂御用地には、皇族が住む宮邸がある。この夏、その静寂を破る騒動が起きていた。2人の女性皇族が暮らす三笠宮東邸の鍵が無理やり開けられ、荷物を持ち去られたのだ。宮内庁幹部が極秘に伏せたこの一件、指示をしたのは意外な人物だった。

 東都大学野球秋季リーグ戦が開催された9月21日、神宮球場内に始球式を告げるアナウンスが響くと、背番号「38」をつけた国学院大学特別招聘教授、三笠宮家の彬子さまが登場した。4年前に闘病の末に亡くなった“ヒゲの殿下”こと、寛仁親王の長女である。

 きゃしゃな彼女は、えいっと投じ、歓声が沸くスタンドに笑顔で手を振った。背番号の38は、3(み)8(や)、つまり「宮」を意味する。彬子さまがこの番号を希望したのだという。

「自分が皇族であることの意味と皇族として何をすべきかを、常に考えている」

 雑誌へ寄せた手記などで、そう語る彬子さま。そんな彼女の周囲で、ある事件が起きていた。

 7月末、赤坂御用地にある三笠宮東邸(旧寛仁親王邸)。彬子さまは宮邸を空け、妹の瑶子さまも米国を訪問中だった。

 そこに訪れたのは、弁護士を連れた品の良い年配の女性。玄関の呼び鈴を鳴らすのだが、宮邸に残る職員は誰も応対しない。女性は通用口に回り、再度呼び鈴を鳴らしたが、戻ってくるのは沈黙ばかり。女性は携帯電話を取り出すと、目の前の宮邸に電話を掛けた。だが、職員はこう繰り返すばかりだった。

「扉は開けられません」

 しびれを切らしたのか、女性は同行した鍵の専門業者にささやいた。業者はいとも簡単に通用口の鍵を開けると、邸内に入り、内側から玄関の扉を開けた。邸内に入った女性は3時間ほどかけて荷物をまとめると、宮邸をあとにした。

 宮家の事情を知る人物がこう話す。

「知らせを受けた彬子さまは、この『侵入騒動』に驚き、ぼうぜんとされるばかりでした。警察に被害届を出すことも検討なさっています。ただ、悩ましいのは無理やり鍵を開けて住居侵入した人物は、母親の信子妃殿下であったのです」

 信子さまサイドは、「私物を送ってもらうことを拒否され、やむを得ず鍵を開けるに至った」と主張しているという。

 なぜ母と娘の間で、「侵入騒動」が起こる事態に至ったのだろうか。

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