鞄から赤いマイタオルを取り出し、昼下がりの光に包まれて、しみじみと湯船に体を沈める内海。カポーンとのどかに響く桶の音。あふれる湯の音。グルメものと違って、たいして語ることもない。ただお湯につかればもう、何も言葉はいらないのだ。

 そして風呂上がりの生ビール。ここで鼓の音がポポポポーンと鳴り、やおらジョッキを掴んだ内海は、脳内劇場で熱くビール賛歌を語り出す。喉が鳴る音と共に、BGMは「ゆ、ゆ、ゆ、ゆげ、ゆ~♪」。風呂は人を無口にするけれど、グルメは人を饒舌にする。だが、その至福タイムも束の間。上司の堂園(トウが立ったお局感が実にちょうどいい八木亜希子)から怒りの電話が入り、あわてて社に戻るお約束エンド。

 実際、会社に戻ったら、絶対石鹸の香りで銭湯行きバレるわとか、赤いマイタオルで鞄の中の資料が湿気るわとか、いろいろツッコミどころはあるけれど、やはりこれはサラリーマンが夢見るファンタジー。

 銭湯と生ビール。もしもこれが女子ならば、「仕事帰りに皇居まわりをジョギング、銀座の隠れ銭湯で汗を流して、ただ今ビールタイムです」と、SNSに画像をアップ。途端にむずがゆさが立ち込めるけれど、これはおしゃれもトレンドも無縁なおじさんの世界。テレ東の週末深夜は、そんな夢の隙間産業。次クールの任侠グルメドラマ「侠飯~おとこめし~」にも期待したい。

週刊朝日 2016年7月1日号