出馬を表明した小林氏。論客から政治家への転身はなるか (c)朝日新聞社
出馬を表明した小林氏。論客から政治家への転身はなるか (c)朝日新聞社

 連休ボケも吹っ飛ぶような意外な面々に、永田町がざわめいた。2カ月弱と迫った夏の参院選に向けて、“サプライズ”候補者たちが次々と名乗りをあげたのである。さえない参院選に活を入れる、目覚めの一撃となるのか。

 まず、与党だけでなく野党側にも衝撃を与えたのが憲法学者の小林節・慶応大学名誉教授(67)の電撃的な出馬表明だ。

 5月9日に会見した小林氏は政治団体「国民怒りの声」を立ち上げ、自身を含む10人以上を参院比例区で立候補させるプランをブチ上げた。会見で報道陣に配られた手書きの「設立宣言」にはこうある。

<私たちは、安倍政権の暴走は止めたいのだが、かといって、未だに民主党政権の失政を赦すことができず、また、共産党に投票する気にもなれない多数の有権者の代弁者たらんとして、ここに第三の旗を立てることにした>

 安保法廃止を訴えて各地で講演活動をしてきた小林氏。野党共闘を促し、比例区に統一名簿で臨むことを訴えてきたが、その挫折が出馬のきっかけという。小林氏がこう語る。

「民進党は早くも支持率が落ちている。共闘をリードする立場なのに他党に懐を開かず、共産党には『そっちがどいてくれればいい』というような失礼な態度。これでは有権者に『政治が変わるかもしれない』というワクワク感が与えられない。やむにやまれず、自ら出馬することにしたのです」

 民進党内からは「野党票が割れてしまう」という懸念の声も上がる。共闘に水を差すことにはならないのか。小林氏に尋ねると、こう断言した。

「誰も損はしませんよ。私はどの党も害するつもりはない。投票に行かない無党派層を掘り起こすのが目的ですから。民進党は放っておいても無党派層が投票してくれると思っているのかもしれないが、自分たちがいかに人気がないかわかっていない」

 今後、野党統一名簿が実現するなどの動きがあれば立候補を取り下げる用意はあるというが、「ブラフではなく、本気で準備を進めている」と一歩も引かない。

 野党共闘を促す「市民連合」などの活動にかかわる上智大学の中野晃一教授(比較政治学)がこう語る。

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