コレステロールと中性脂肪の複雑な代謝のしくみとは(※イメージ)
コレステロールと中性脂肪の複雑な代謝のしくみとは(※イメージ)

 予備軍も含めると患者数は3千万人以上といわれる脂質異常症。“ドロドロ血”が動脈硬化の直接の原因ではないなど、コレステロールと中性脂肪の複雑な代謝のしくみが明らかになってきた。

 東京都在住の田畑保子さん(仮名・63歳)は1年前、駅の階段を上りきったところで息苦しくなり、救急車で昭和大学病院に運ばれた。心臓に酸素と栄養を送る冠動脈が狭くなる狭心症の発作だった。適切な処置で事なきを得たが、脂質異常症があったため同大東病院の糖尿病・代謝・内分泌内科を受診することになった。

 田畑さんの検査値は、空腹時の中性脂肪値が260、総コレステロール(TC)が230、LDLコレステロール(LDL‐C)が143、HDLコレステロール(HDL‐C)が35だった。同科主任教授の平野勉医師は次のように話す。

「田畑さんのように、LDL‐Cはそれほど高くなくても中性脂肪が高い場合、LDL‐Cが小型化して“超悪玉コレステロール”と呼ばれる『スモールデンスLDL』になり、血管壁にさらに入り込みやすくなっていると考えられます」

 中性脂肪とTCがともに高い人は、TCだけが高い人よりも心筋梗塞のリスクが2倍以上になるという報告もある。

 中性脂肪自体は血管壁に蓄積することがないため、動脈硬化の直接の原因にはならない。しかし過剰になったLDL‐Cを小型化する、善玉のHDL‐Cを減らすなど、いわばLDL‐Cの後押しをして動脈硬化をすすめてしまう。

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