民主党と維新の党が合流し、「民進党」として再出発することになった。ジャーナリストの田原総一朗氏は、参院選で民進党の頑張りに期待したいという。

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 民主党と維新の党が合流して結成される新党は、民進党という名称に決まった。両党が実施した世論調査で、維新の党が提案する「民進党」が、民主党の提案する「立憲民主党」を上回ったためである。

「民進党」を提案した維新の江田憲司前代表は、党名について「国民とともに進む政党」と説明してきた。

 だが、民進党と決まったことに少なからぬ民主党の議員たちは強い不満を抱いている。

 世論調査は両党がそれぞれ2千人から有効回答を得たのだが、維新側は当然としても、民主側の調査でも、民進党の支持が立憲民主党を上回った。実は、民主党議員の多くは、民主党側の調査では立憲民主党が上回るものと予測していたのだ。

 民主党の少なからぬ議員たちは、あらためて岡田代表の世論調査のやり方が間違っていた、と批判している。議員の数が、民主党は衆議院で3倍以上、参議院では10倍以上多いのだから、それを両党2千人ずつとしたのが失敗だというのである。

 もちろん、結果が出た後から世論調査のやり方を批判しても仕方がないのだが、7月の参院選後に、党内で波乱が起きそうな気配が濃厚だ。

 
 実は参院選について、民主党は少なからぬ悩みを抱えている。7月の参院選の民主党の改選議席数は42。これは6年前の菅直人内閣時、つまり民主党が政権を握っていたときに獲得した議席数なのだ。

 民主党が12年12月の衆院選で惨敗し、野党になった海江田万里代表時に行われた3年前の参院選では17議席しか獲得できていない。安倍政権の一強多弱時代となったわけだ。そしてこの3年の間に、状況に変化があったとは思えない。

 朝日新聞が3月12、13日に実施した世論調査によると、民進党に「期待する」は31%、「期待しない」が57%であった。読売新聞が3月4~6日に実施した世論調査でも、「期待する」は31%、「期待しない」が60%となっている。

 国民から見ると「民主党と維新の党が合流しても、日本の状況が変わるとは思えない」というわけだ。

 参院選で、もしも現有の半数以下の議席しか獲得できなければ、間違いなく波乱が起きる。そうならないために、民進党の頑張りに期待したいと思っている。

 安倍内閣の安保関連法の成立のさせ方は、私は乱暴すぎるととらえている。集団的自衛権の行使に一貫して反対し続けてきた内閣法制局の姿勢を変化させるために法制局長官の首をすげ替えたのも乱暴であり、朝日新聞の調査では憲法学者122人のうち104人が、安保関連法は憲法違反だと答えている。

 さらに安倍内閣の経済政策であるアベノミクスについても、行き詰まり感が強く、日銀のマイナス金利政策は効果らしきものは出ていない。

 私は、特に民主党のこれまでの安倍内閣との戦い方は、あまりにもお粗末すぎたととらえている。集団的自衛権の行使を柱とした安保関連法に対しても、アベノミクスに対しても、批判するだけで対案らしきものをまったく示せていない。批判するだけならば共産党でこと足りる。民主党は、いやしくも一度は政権を担った政党である。民進党として、安保関連法に対しても、アベノミクスに対しても、具体的な、国民を納得させる対案を打ち出してもらいたい。それができないのならば合流する意味はない。

週刊朝日  2016年4月1日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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