店頭にずらりと並ぶウィッグの既成品(撮影/写真部・植田真紗美)
店頭にずらりと並ぶウィッグの既成品(撮影/写真部・植田真紗美)

 日中の情報番組を見るたびに気になっていた女性用カツラのCM。なにしろカラーリングをして2週間で白髪が目立ち始めるのだから堪らない。3~4週間ごとに1万800円が飛んでいく。いっそのこと、カツラのほうが安上がりではないか、とCMを見るたびに悶々としていた。

 そんなときだ。編集部から記者(49)へ女性用カツラについて記事にしてほしいと連絡があったのは。

 矢野経済研究所「2015年版ヘアケアマーケティング総鑑」によると、国内毛髪業の女性市場の規模は10年度から14年度まで続けて増加。617億円だった10年度から比べると、14年度は707億円で114.6%の成長率だ。カツラというと男性のイメージが強いが、今や男性市場の規模をも上回る。通販会社や他業種も参入するなど、市場規模は広がる一方だ。

 その理由の一つが女性の“薄毛”の悩みだ。東京医科大学皮膚科主任教授の坪井良治氏は、「薄毛は増えていない。気にする人が増えている」と言う。美容皮膚科を展開するシロノクリニックでもそんなデータが出ている。同院では08年に「レディース頭髪外来」を開設したが、

「6年前と比べると、1年間の来院者は4.6倍に増加しました」

 と広報担当者。同院の意識調査では、94%の女性が「薄毛だけは避けたい」と望み、67%が「将来に薄毛の危機感を感じている」という。一方、

「髪のお悩みでウィッグを使っていた時代から、今はファッションの一アイテムとして受け入れられた背景があり、より身近になってきているのでは」

 そう話すのは、業界最大手のカツラメーカー、アデランスだ。最近はウィッグ記事を美容雑誌や女性ファッション誌でも見かけるようになった。アデランスや業界2番手のアートネイチャーの中心顧客層は50代から70代。ファッション感度の高い女性が、薄毛とオシャレを両立させるアイテムとしてウィッグを使っているというわけだ。

 実際、カツラはアンチエイジングに役立つのか。

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