高知県では、今年9月に初めて、都内で起業を支援するセミナーを無料で開催した。全5回の都内でのセミナーと、県での視察研修のフィールドワークがセットになった内容だ。定員の30人を超える応募があった。

 参加者は学生を含む、20~30代の若者が中心。「(高知県に)住みたいけれど、仕事がない」という課題に応える解決策のひとつとして取り組み始めた。

「移住相談に来る人は、総じて若い層が多く、窓口を通じた相談件数は年々増え続けています。移住に対する若い世代の関心事は、仕事と住居がほとんど。今後も取り組みを充実させていきたいと考えています」(高知県移住促進課)

 尾崎正直・高知県知事が音頭を取って始めた「高知家(こうちけ)」のCMやイベントなどプロモーション活動も、イメージアップにつながっている。

 一方で、「地方に仕事がない」というのは、少し前までの話だとする声もある。「人手不足が深刻な地方にこそ雇用のチャンスがあふれている」と話すのは、総合人材サービス大手のリクルートキャリアの担当者。

「地方では、仕事の数に対して、人が圧倒的に足りていないところがほとんど。求人を出していない企業すら、働き手を探しているところは多くあります」

 なのになぜ、「地方に仕事がない」というイメージが強いのか。それは、地方企業の努力不足によるところもあるという。

「情報発信の仕方や、採用方法の見直しなど、地方企業の努力次第でもっと応募者は集まるはず。今、都市部からまとまった人数を採用したいと考える地方企業でも、面接は平日に地方で行うのみで、スカイプ面接はおろか、出張面接すら設けないところがほとんど。週末の面接日程の選択肢もなく、都市部からの応募者にとってはハードルが高すぎるのが現状です」

(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2015年11月6日号より抜粋