「山林のオーナーが機械を用意し、作業する人員を地域から雇う。どの木を伐採するかは『フォレスター』と呼ばれる公務員が全体を見ながら決めるため、乱伐にもならない。20年前は木材といえば家具を作るものだったが、いまは貴重なエネルギー源。私の村でも、住民の使用する3倍の電力をバイオマス発電が生み出しています。熱も活用され、村人は1年のうち9カ月間、恩恵を被っているのです」

 バイオマス発電機の小型化に関しては、米国も進んでいる。コロラド州のコミュニティーパワー社では、自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)製の排気量8.8リットルガスエンジンを使い、165キロワットの電力と熱を生み出す。木材チップに高熱を加えると、ガスができる。そのガスでエンジンを回して発電する仕組みだ。ガス化発電方式は小型化できる半面、燃料に余計なものが混ざるとトラブルを起こすことなどがネックだ。だが、同社のシステムで使える木材チップはココナツ、クルミなどを含め約50種類と豊富。今後はゴミも燃料として使えるようにする上、発生したバイオガスから軽油やジェット燃料も作り出すという。同社のウェイン・マクファーランドCEOは言う。

「ガス化発電方式の世界の主流は2千~2万キロワットだが、小型需要の拡大を見込んで100キロワット程度のものを作る。日本にも最初の製品納入が決まったばかりだよ」

 山梨県下の郊外で太陽光発電施設の設置に取り組んできた吉田愛一郎氏も小型化のバイオマス発電設備を日本に普及させる計画で、コミュニティーパワー社とのパートナーシップを考えているという。

 国もようやく小型化発電設備の促進に舵を切り始めた。今年度からFITのバイオマスのカテゴリーを2千キロワット未満と以上に分け、2千キロワット未満をより優遇するようにしたのだ。

 だが、熱利用が考慮されていないなど、改善すべき点は多い。シンクタンク研究員はこう言う。

「日本も欧州の取り組みを参考に、総合的な法整備を進める必要があります。いまこそ長期的な目的を定め、しっかり議論をしていく土台を作るときなのです」

週刊朝日 2015年10月30日号より抜粋