ひと騒動はあったものの、それ以後は利用状況を通知する自動メールがしっかり届くようになった。使っていれば安心し、使っていなければ心配が募る。それでも、孫の写真を送ると「かわいえかおしてる」などと、たどたどしい返事をくれることもあり、慣れないスマホを必死で操作する父の姿を思い浮かべてこちらの心も和んだ。当初、想像していた「親のケアを他人や機械に任せている罪悪感」はまったく感じない。親孝行している気分になれるのが意外だった。

 シンプルなシステムから24時間駆けつける手厚いものまで、バラエティー豊かにそろった見守りサービス。どのように選び、利用していけばいいだろうか。

 遠距離介護を支援するNPO法人パオッコの太田差惠子理事長は「親の心身状態やライフスタイルに合っているかをよく吟味して。最低限の安否確認でいいのか、もう一歩踏み込んだ見守りが必要なのか、目的を明確にするのも重要です」とアドバイスする。

 たとえば親が認知症の場合、手厚い緊急通報機能はむやみに押してしまって混乱の原因になる恐れがあるのに対し、センサー型なら、症状の進行を察知しながら見守りができる。また、ガスや携帯、ポットなどの利用状況を知らせるタイプは、毎日それを使う親の安否確認にはぴったりだが、頻繁に使わない人にはあまり意味をなさなくなる、という具合だ。

「一度利用するともう手放せなくなる、という人も多くいます。上手に使えば親子の絆を深めることができますよ」(太田さん)

 記者の場合、それまでは忙しさにかまけて親のことを思い出さない日も多かった。だが、今は毎日の自動メールが届くたびに父のことを思い、ほんの一言あるいは写真だけという簡単なものだが、メールを返す。

 安否確認や健康管理という点では万全とはいえないかもしれないが、以前よりずっと父を身近に感じるし、連絡することが増えた。見守りサービスは互いを思い合う親子の心をそっとつないで、形にしてくれる存在なのかもしれない。

週刊朝日 2015年10月23日号より抜粋