国立長寿医療研究センターが実施した全国難聴者数の推計は65歳以上で1500万人を超える。一方で年を重ねても聴力を良好に維持できている人もいる。老人性難聴の発症原因などを研究している、東京大学病院耳鼻咽喉科教授の山岨達也(やまそばたつや)医師に予防や対策について聞いた。
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音は振動となって「内耳」にある「蝸牛(かぎゅう)」の「有毛細胞」を刺激し、電気信号に変換されて脳に伝わります。老人性難聴は、加齢によって有毛細胞のほか、電気信号を脳に伝える神経伝達物質、内耳へ送る血流が減るなどして起こります。老化の速度には個人差があり、遺伝的要因や環境要因によって、老化のスピードは早まります。
遺伝的要因では、動脈硬化になりやすい遺伝子をもっている人は早めに難聴になるといわれています。動脈硬化の危険因子となる高血圧や糖尿病、喫煙なども難聴の進行を早めると考えられています。
難聴の環境要因は、騒音です。騒音が活性酸素を大量に発生させ聴覚領域の細胞の老化を早めるのです。家族に「最近テレビの音量が大きい」と指摘されたり、会話が聞き取りにくくなったりして生活に不自由を感じたら、補聴器の使用を検討するタイミングです。