図書館に続く、全国初の試みで注目の的となり、先行導入していた学校の公開授業には、学校や自治体、保護者、塾、企業などから350人が詰めかけ大盛況。「大きな話題となり、武雄市の名前も有名になり、樋渡前市長もご満悦でした」(市議会関係者)。
当時の報道を見ても、「やる気を生む授業 先駆けた武雄」など、武雄市の取り組みを評価するものが多かったが、現場は違った。匿名を条件に武雄市の小学校教諭はこう嘆いた。
「戸惑うばかりでした。我々教師には十分な研修はされずに、タブレット型端末が渡され、活用するように言われた。教材となる動画は分担で作らなければならないし、他の先生が作った動画を無理やり授業で使わなければならない。さらに、タブレット型端末自体がフリーズなどで作動せず、振り回されることが多いのです」
にわかに信じ難い話だが、事実だった。冒頭の公開授業前、記者らが学校側からタブレット型端末のレクチャーを受け、教えられたとおりに操作したところ、起動しない。支援員に助けを求めてもうまくいかず、結局、別の端末を渡される始末。現場にいた市の関係者はこう吐露した。
「公開授業なので、十分に整備、調整していたのですが、性能が良くなくてスムーズに動かないんです」
日常の授業は、いったいどうなっているのか。この日、視察に来ていた別の市議会関係者は言う。
「何度も公開授業を見ているが、タブレット型端末はトラブルばかり。支援員だけでは手が足りず先生も対応に追われ、授業時間が削られてしまう。年間にすればかなりの時間の無駄。一番の被害者は子供ですよ」
授業を受けていた児童もこう不満を言った。「よう壊れるけん。ママのスマホのほうが動きがいい」。
先生からも児童からも、非難囂々(ごうごう)のタブレット型端末は、恵安(本社・東京)製の「KEIAN M716S‐PS」などのAndroidがベースとなる機種だ。
(今西憲之/本誌・牧野めぐみ)
※週刊朝日 2015年6月19日号より抜粋