5月28日、市立東川登小学校3年1組の算数の公開授業。あと少しで授業が終わりというときに、先生がこう声をかけた。「タブレットを机の上に出してください」。
自慢のタブレット型端末を手にした児童だったが、「先生、パスワード入れても次の画面に動かん」。
口々に助けを求める。すると、先生とサポート役の支援員が1台の動かないタブレット型端末の対処に追われ、上に向けたり、左右に振ったりと悪戦苦闘。
授業は一時中断され、右往左往しているうちに、終わってしまった。クラスの全児童は9人。普通なら瞬時に終わるはずのタブレット型端末の操作に、10分近くかかったのだ。
「教科書やプリントでやったほうがずっと効率的でわかりやすい。時間の無駄だし、端末なんていらんよ」「もっとすごいのかと思っていたのに、がっかり」と、授業参観した人々からは、手厳しい声が上がる。
「タブレット型端末そのものが、あまりよろしくなくて先生も慣れていない。与えられたもので対処することが我々の仕事です」と、学校の担当者は恐縮しながら、タブレット型端末の問題を認めるのだ。
武雄市がタブレット型端末を市立の全小中学校に1人1台配布すると決めたのは、2013年5月──。
市の図書館の運営を、TSUTAYAに委託するなど、改革派として知られる樋渡啓祐前市長肝いりの事業だ。市議会では当初疑問視する意見もある中で、14年度から小学生全員に、15年度からは中学生全員に無償で配布された。