国会では安全保障関連法案を巡る審議が進んでいる。作家の室井佑月氏は安倍晋三首相の答弁や態度について「変に見える」という。

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 東京新聞の「発言」という欄に、61歳の主婦の声が載っていた。

「安倍首相の暴走にはへきえきしているが、抗議の声をあげる自民党員は、ひとりもいないのか」

 だよなぁ。あたしもそう思う。自民党議員、ひとりひとりにインタビューしたいくらいだ。ほんとにあなた、安倍さんが頭でいいと思っているのかと。保身のために黙っているのだとしたら、議員辞めたほうがいいしね。

 5月26日からの国会を、ひとりでも多くの人に見てもらいたい。安倍さんが変に見えるのは、あたしだけじゃないはずだ。

 指名されてないのに、興奮して前に出て答える。ヤジを飛ばす。質問に答えず、意味のない持論をまくしたてる……これがいちばんの問題じゃ。

 たとえば、専守防衛。今回の安全保障法制の整備で「日本が直接攻撃されていなくても、我が国と密接な関係にある他国が攻撃を受け、新しい3要件を満たせば自衛隊も集団的自衛権を行使し反撃できる」ことになる。なのに、安倍首相は、「(以前と)まったく変わらない」といいはる。新3要件の、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とはいったいどういうものか訊ねても、「さまざまな要素を総合的に考慮し、客観的、合理的に判断する」とドヤ顔だ。

 だから、それは答えにならない。「新安保法制だと、どっから自衛隊が武力行使をすることになるの?」。そう訊ねられて、「そのとき考える」っていわれても。

 
「米国の戦争に巻き込まれることは絶対ない」とのことだが、その根拠を質問しているのに、「戦争法案というのはまったく根拠のない、無責任かつ典型的なレッテル貼り。恥ずかしいと思う」と答える。

「その根拠は?」と聞かれ、「その根拠は?」というアンサー。しかも、そんな質問するやつが恥ずかしい、そうレッテル貼りしているのは自分。そう思うのなら、なぜ恥ずかしいと思うのか、きちんと説明せよって話だよ。

「海外派兵は一般に禁止されている」といいながら、安倍さんが行いたいホルムズ海峡での機雷除去について訊ねられると、「例外的に認められる」だとさ。

「じゃ、例外とはなに?」

 そう訊ねられると、

「極めて慎重な当てはめをしていく」

 ……う~っ! わざと? それとも、言葉の意味を理解できないの? どっちにしろ不味(まず)いんじゃないかと思ってテレビを見ていたら、日テレNEWS24で、

「安倍首相は28日夜、自民党議員らとの会合に出席した。出席者によると、安保関連法案の審議について『野党の攻め方は下手だ。自分たちが野党ならもっとうまくやれる』などと野党側を批判したという。また、安倍首相は質問の内容について『同じことばかりだった』と話していたという」

 ぎゃ~っ! まさかの後者かも。

週刊朝日  2015年6月19日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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