一部週刊誌では早くも翁長雄志(おながたけし)知事(64)へのバッシングが始まっている。これは“国策”に反発して政府・与党と対決する知事の宿命ともいえる。かつて国の原発政策に異論を唱えた佐藤栄佐久元福島県知事(75)は、2006年に身に覚えのない談合疑惑の追及を受けて辞職後、逮捕された。その佐藤氏が、翁長知事を支援するために立ち上がった。自身の思いをこう語る。

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 私と一緒に逮捕された弟は、取り調べのときに検事にこう言われました。

「知事(佐藤氏のこと)は日本のためにならない。いずれ抹殺する」

 担当検事が、“国策”に反する政治家は許さないと認めたということです。

 1988年に知事に就任したときは、私は決して「反原発」ではありませんでした。むしろ推進する側だったといえます。

 それが変化したのは、就任から4カ月後の89年正月です。福島第二原発3号機で冷却水再循環ポンプが壊れ、30キロの部品が原子炉内に落ちる事故が起きました。

 
 ところが、東京電力から福島県や地元住民にそれが伝えられたのは1週間後。最も大切な関係者である地元住民は無視されたのです。この構造は、沖縄の基地問題と共通しています。

 原子力政策に疑問を抱いた私は、東京電力の隠ぺい体質を批判し、情報公開を求めて国に異議を申し立てました。政府や自民党議員とも激しくやりあい、「闘う知事」と呼ばれたこともあります。

 談合疑惑を受けたのは5期18年目の06年。ある建設会社が、弟が経営する会社の土地を買ったことが、公共事業を受注するための見返りだったというのです。逮捕容疑に身に覚えはありませんでした。

 結果として裁判で認定された収賄額はゼロ円でしたが、12年に懲役2年、執行猶予4年の有罪となりました。前代未聞の事件でした。

 いま、「辺野古新基地建設」という国策に対峙している翁長知事にも、同じことが起こらないとは言い切れません。そのことを心配しています。

 私が住む郡山市では、保守・革新のイデオロギーを超えて、辺野古新基地建設阻止を訴える「沖縄・福島連帯する郡山の会」が発足し、私も相談役に就任しました。沖縄県民だけでなく、多くの日本人が翁長知事の行動に注目すれば、不当な圧力を防ぐことにつながります。みなさんで翁長知事を守ってほしい。それが私の願いです。

(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2015年6月5日号