収穫を間近に控えたぶどう。無農薬で栽培されているため、葉や実には虫食いあとなどもある(撮影/写真部・松永卓也)
収穫を間近に控えたぶどう。無農薬で栽培されているため、葉や実には虫食いあとなどもある(撮影/写真部・松永卓也)
5頭の馬でぶどう畑の約40%を耕作している(撮影/写真部・松永卓也)
5頭の馬でぶどう畑の約40%を耕作している(撮影/写真部・松永卓也)

 有機農法で栽培したぶどうから造られる「ビオワイン」が注目を集めている。ビオ先進国のフランスで、ビオワインの中でもさらに厳格な自然農法「ビオディナミ」に取り組むシャトー・ポンテ・カネを訪れた。

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 ワインの一大産地であるフランス・ボルドー。中でも名門シャトーが集まるメドック地区で、ポンテ・カネは2004年、ボルドーの格付けシャトーで初めて、月の周期に合わせて農作業などをする自然農法「ビオディナミ」を取り入れた。化学肥料を使わないビオワインへの関心が高まる中、さらに先進的な取り組みをするポンテ・カネは、現在ワイン通の間でも注目のシャトーだ。

 収穫を間近に控えた、9月末。ぶどう畑の中を馬が悠々と歩いている。ポンテ・カネでは、08年からトラクターの代わりに、馬を使い耕作をする。

「トラクターより重量の軽い馬を使うことで、土を固めず耕作できます。ふわりとした土には空気や光が入りやすく、いい土ができます」と話すのは、醸造責任者のジャン・ミッシェル・コムさん(50)だ。

 手間のかかる作業に加え、大西洋に近く湿気の多いボルドーでは、他の地域に比べ、ビオディナミを取り入れるシャトーが少なかった。

 オーナーのアルフレッド・テスロンさん(67)は、「畑のピュアな風味をボトルに詰め込むことを追求した結果、ビオディナミにたどりついた」と話す。

 当初は、効果に懐疑的な見方もあったが、ポンテ・カネの味に影響を受けた、名門シャトーがビオディナミを取り入れる動きも出始めた。

「05年以降、ポンテ・カネの評価が上がりました。スパイシーな果実感と酸味のあるバランスのとれた、テロワールを感じる味になった印象を受けます」

 と話すのは、ソムリエの田崎真也さん。ただ、品質の向上はビオディナミだけの効果ではないと指摘する。生産量を減らし、ぶどうの質を高めたことなど一連の取り組みがあってこそだという。

 伝統のワイン産地に新風を吹き込むポンテ・カネ。そのワインはさらに進化を続ける。

取材協力=ボルドーワイン委員会(C.I.V.B.)

週刊朝日 2015年2月27日号