ガリ、ガリガリガリ!

 パワーショベルが異音を響かせると、トタン屋根、空き瓶、タイヤ、果ては自転車までがザクザクと掘り出された。放射線量を計測すると、周囲の2~3倍の数値を示す汚染されたプラスチック片もあった。

 本誌が昨年12月13日号で特報した、福島県田村市の除染作業のデタラメが発端だった。作業の中で放射能汚染された疑いのある大量の物を、家主に無断で民家の庭に埋めた、という内部告発があった。雪解けを待ち、4月23日に再度、民家の庭を掘ったところ、冒頭のようなガラクタが大量に掘り出されたのだ。

 大きなポイントは自転車だった。本誌に告発した吉田慎三さん(仮名)は、

「家主さんが使っていると思われる、白い自転車まで埋めました」

 と話していた。まさにその告発どおりに、白い自転車が地中約1.5メートルから発見されたのだ。立ち会った家主はそれを見た瞬間、

「この自転車、ごみ捨てに行くときに、よく使っていたんですよ」

 と憤懣(ふんまん)やるかたない表情で話した。

 本誌がその後も報じてきたように、現場に来た福島県警は、目視やスコップで掘り返すだけで、

「この土質は古い。最近埋めたものではない」
「ガラクタが埋まっているなら、家主が勝手に埋めたんだ」

 などと決めつけて捜査を打ち切っていた。

 そこで今回、本誌などの依頼により、専門業者による土質調査も行われた。大量のガラクタが掘り出された場所の近くで地中2メートルまでボーリング調査をして、専門業者は、掘り返しと埋め戻しが行われたのは明らかと、鑑定結果で述べている。

 土質調査でも、最近、掘り返された痕跡があることがはっきりした。

「福島県警や田村市は、家主のせいだと言っていたがとんでもない。許せない」

 と家主は憤る。(改行トル)現場には、家主の依頼を受けた弁護士も立ち会った。

「家主の同意もないし、明らかな不法投棄。掘り出されたガラクタから放射能が検出された場合は違った法に触れます。使用していた自転車などが埋められていたので窃盗の疑いもある」

 今後、刑事・民事での提訴も視野にあるという。

 夕方になって、ようやく福島県警と田村市の担当者が駆け付けた。大量のガラクタを前に担当者は唖然。

「私はパワーショベルも使えないし、これだけの分量を一人で埋められますか」

 と家主が言うと、

「これから調べます」

 と田村市の職員は言葉少なに言うばかり。

 本誌の告発からすでに半年近い。迅速な対応をしてこなかった、福島県警や田村市の「罪」は重い。

週刊朝日 2014年6月6日号