オウム真理教元幹部の平田信被告(48)に3月7日、懲役9年の実刑判決が言い渡された。1カ月半に及んだ公判は、3人の死刑囚や逃亡生活をともにした元信者の女性が証人として出廷したほか、被害者の遺族が審理に参加。改めて一連のオウム事件がクローズアップされた。

 平田被告が約17年間の逃亡生活に「出頭」という形でピリオドを打ったのは、2011年の大みそか。その後、目黒公証役場事務長拉致事件など三つの事件に関与したとして、逮捕監禁罪などで起訴された。

 法廷に現れた平田被告は、手配写真とは似ても似つかぬさっぱりとした風体。短髪で黒のスーツに、ネクタイ。出頭した潔さに加え、反省ぶりをアピールするかのように背筋を伸ばし、弁護人の脇に座った。

 教団への強制捜査が始まっていた1995年5月、平田被告と東京・高田馬場駅で待ち合わせをして、ともに逃げ続ける道を選んだ元信者の女性(犯人蔵匿罪で1年2カ月の実刑判決を受けて服役後、出所)は、証言台で涙ながらに訴えた。

「誠実さを感じ、信頼し、尊敬している。教団の教義とは別に普通の常識を持つ人だと感じていた。(帰りを)待ちます」

 一方、当の平田被告はどこか、ひとごとだった。

 教団の犯罪にかかわっていた責任を誠実に受け止めているとは信じがたい答弁に終始した。

「三つの事件では、いずれも事前に計画を知らされていなかった。(詳細を)尋ねようとは思わなかった」
「何かの手伝いをするような軽い気持ちで現場に行った」
「(出頭するまで時間がかかったのは)女性との生活を守りたかったからでもあります」

 そんな平田被告に斉藤啓昭裁判長は、

「被告人の証言は整合性がなく、計画を了承していたのは明らか。逃亡を続けたことも軽視できず、今後も事件と向き合って反省する必要がある」

 と、ばっさりと切り捨てた。

 元教団幹部の井上嘉浩死刑囚(44)は、証言台でむせび泣きながら言った。

「服役後、生きて社会に戻れる人です。二度と事件を起こさないよう、できる限り尽くしてほしい」

 かつての「上司」からのメッセージは、平田被告の心に届いただろうか。

週刊朝日  2014年3月21日号