ネット規制強化って、どこかの国のようですけど (c)朝日新聞社 @@写禁
ネット規制強化って、どこかの国のようですけど (c)朝日新聞社 @@写禁

 ある日、福岡市役所の職員がパソコン操作をしていると不思議な現象が起こった。あるニュースサイトをクリックすると現れたのは、〈このサイトの閲覧が業務上必要ですか?〉という派手な黄色の画面。そこには、〈インターネットアクセス状況は全て記録されており、業務上必要がない場合にはコンピュータの不適正利用はもちろんのこと、勤務時間内であれば、職務専念義務違反と見なされる場合もあります〉と警告めいた文言が並んでいた。

 別の職員も同じ体験をした。大手IT企業のブログを閲覧しようとすると、〈このサイトの閲覧・書き込みはできません〉と黄色の警告画面に切り替わった。それでも閲覧する場合には、〈閲覧解除申請書をダウンロードして所属長決裁〉が必要だというのだ。

 福岡市役所で大規模な閲覧制限が始まったのは8月から。それまでは、閲覧禁止はアダルトサイトや出会い系サイトなどに限られていた。それが、ネットオークション、ショッピングサイトは閲覧禁止、ニュースサイト、ブログ、SNSなどは確認画面からログインするよう義務付けるなど、制限範囲がどんどん広がっていった。

 福岡市の市議会議員の一人が困惑ぎみに語る。「SNSやブログは市議にとって大事な発信源。それが、市庁舎内で書き込みができない。市議の書き込みは市職員にも読んでほしいが、それもできない」。

 なぜ、福岡市は閲覧制限を強化するのか。

「市役所幹部に『ハンターを見るな』と市長が言い始めたのがきっかけのようだ。市長はかなり頭にきているらしい」(前出の市議)

「ハンター」とは、福岡市の高島宗一郎市長(38)の市政運営に批判的な記事を掲載している地元のニュースサイトだ。高島市長関連の批判記事は数十本にも及び、内容も手厳しい。

「私も市長から、ハンターは見ちゃイカンと言われましたよ。閲覧制限を始めると知り『ハンターのせいだな』とピンときました」とは福岡市幹部。

 市長に関する「耳の痛い話」は職員に知られたくないということか。福岡市役所は取材にこう答えた。

「インターネットも多様化して、業務に必要なものを精査することで効率化につながると思い(閲覧制限を)始めました。ハンターの記事? まったく関係ありません」(情報システム課)

 批判にも耳を傾けるのが市長の仕事のはずだが。

週刊朝日  2013年11月1日号