理事長ポストは97年に、初代の直治氏から2代目の誠氏へ受け継がれた。山科親子と同郷の森喜朗元首相も、理事の一人だ。

 バンダイも長年この財団を支援してきた。例えば10年度は、バンダイが300万円、グループ会社のハピネットとバンダイロジパルがそれぞれ100万円と50万円を寄付している。

 民間の公益活動を促す政策提言をしている公益法人協会の太田達男理事長によると、財団法人の基本財産は、動かさないのが"基本のキ"だ。

「基本財産は、法人格が与えられる基礎となる財産であり、法人の『命』といっていい。理事長の一存で好き勝手に動かしていい性質のものではありません」

 ところが、おもちゃ財団では、そうした「常識」は通らなかった。

 本誌は財団の預金通帳の写しを入手した。名義は「財団法人 日本おもちゃ図書館財団 理事長 山科誠」。中身を見ると「山科ホールディングス」(以下、山科HD)や「サンカ」といった会社との間で、数百万円から数千万円ものカネが頻繁にやりとりされている。

 山科HDもサンカも、山科氏の資産を運用するための個人会社で、代表は山科氏だ。山科HDの元役員がこう証言する。

「山科さんは財団のお金を運用して利益を出し、持ち出した分は後で返せばいいと思っていたようです。私は山科さんに言われるがままに、基本財産の現金を株式などで運用しましたが、1億円以上の赤字を出し、返すことが徐々に苦しくなりました。また、バンダイ株は株価が高いときに売り、安いときに買い戻すように運用し、一時はかなり利益を出しましたが、その運用益は財団ではなく山科HDに入れました」

◆「数字の帳尻だけ合わせておいて」◆

 今年初めまで財団の経理を担当していた女性も、内情をこう明かす。

「3年くらい前から、山科理事長はしょっちゅう財団のお金を引き出し、決算期や理事会に報告を上げるときだけ口座に戻して帳尻を合わせていました。報告書を上げたらまたすぐ引き出す。その繰り返しでした」

 山科氏にとって財団の基本財産は「第2の財布」だったようだが、そんなむちゃなやりくりが長続きするはずもない。案の定、今年3月期の収支報告書では、基本財産からバンダイ株が消失し、代わりに預金が約3億円増えていた。この"異常事態"に気づいた財団幹部は山科氏に詰め寄った。

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