鉄分が豊富な食材といえば、ひじき、あさりの水煮、しじみ、レバー、きくらげなどがあげられます。ところが最近、「ひじきは鉄分が多い食材」というのは過去の話だった、ということがわかりました。3~4月が旬のひじき。なぜ以前は、ひじきには鉄分が多いといわれていたのでしょう。
この記事の写真をすべて見るひじきは栄養豊富。「鉄分の王様」 といわれてきたが…。
ひじきは栄養豊富な食品です。100gあたりの含有量を見てみると、カルシウムが牛乳の12倍、食物繊維がごぼうの7倍、マグネシウムがアーモンドの2倍も含まれています。そのほかにも、ビタミンBや葉酸なども豊富で、しかも低カロリー。そして、なんといっても鉄分が豊富に含まれているので、「鉄分の王様」と言われてきました。
しかし、その事実は過去の話。現在のひじきには、そんなに鉄分が含まれていないようなのです…。
ひじきの鉄分が9分の1以下に減っていた !! 食品成分表が15年ぶりに改訂され明らかに。
文部科学省は昨年末、「日本食品標準成分表」の改訂版を公表しました。1950年に初版が作られて以来、15年ぶり、7回目の改訂です。
これによると、干しひじきに含まれる鉄分が、改訂前の9分の1以下に減っていることがわかりました。
具体的には、従来は、干しひじきに含まれる鉄分は、100gあたり58.2mgとされてきましたが、改訂後は、そのおよそ9分の1、100gあたり6.2mgしか含まれていなかったのです。
鉄釜からステンレス釜へ。以前のひじきは鉄釜で茹でていたから、鉄分が豊富だったのか !!
干しひじきは、原料の海藻を鉄製の釜で煮て渋みを取り、乾燥して作られます。以前はひじきを煮るとき、鉄製の釜が使われていました。しかし近年、使われる釜が鉄製からステンレス製に代わりました。それで、ひじきに含まれる鉄分が減ったというのです。鉄釜で茹でていたから、ひじきの鉄分が多かった…。つまり、ひじき自体には鉄分は多くなかったのです。
今回改訂された成分表を見ると、ステンレス釜で加工されたひじきには、100gあたりの鉄は6.2mgしか含まれていません。一方、鉄釜での加工だと58.2mgです。
鉄分という観点でひじきを利用したい場合は、原材料の表記で、ステンレス製の釜で加工したのか、鉄製の釜で加工したのかをチェックしたほうがいいでしょう。
ひじきのほかに、切り干し大根について見てみると、100gあたりの鉄分は3.1mgで、以前の9.7mgのおよそ3分の1となっています。これも、以前は鉄製の包丁で加工していましたが、ステンレス製の包丁にとってかわったため、鉄分が減ったと考えられています。
加工する釜や包丁によって、食品の鉄分が変わるなんて、考えもしなかったことが起こるものですね。今回の改訂で、ひじきは「鉄分の王様」とは言えなくなりましたが、食物繊維やカルシウムなどが豊富な食品です。4月からひじき漁が解禁されます。今年もおいしいひじきがとれますように。
※日本ひじき協議会では、ひじきの「蒸煮」の場合、釜の材質によって鉄分含有量は変わらないと推測しています。同会では今後、鉄分含有量について、詳しく研究するとしています(以下のリンク先参照)。