11月12日、日本記者クラブで会見する小泉純一郎元首相。カリスマ性は健在。いすを断り、1時間半にわたって立ち通しで話した(撮影/朝日新聞社・内田光)
11月12日、日本記者クラブで会見する小泉純一郎元首相。カリスマ性は健在。いすを断り、1時間半にわたって立ち通しで話した(撮影/朝日新聞社・内田光)

 ワンフレーズで国民世論を味方につけ、突破する。政敵が攻めるほど燃える。小泉純一郎元首相(71)はそんな男だ。さまざまな場面で発信を始めた小泉氏に、安倍晋三首相が「今の段階で(原発)ゼロを約束することは無責任だ」と反論すると、闘争心に火がついた。

 11月12日の日本記者クラブでの会見で、これまでの論から踏み込んだのは、原発の「即時ゼロ」を明言し、それを決断する安倍首相の資質にまで迫った点だ。もはやターゲットは完全に自民党、安倍政権である。

 原発推進論者であり、かつて小泉内閣の官房長官を務めた細田博之幹事長代行もさすがに、「全部やめてしまえというのはあまりにも暴論だ」(13日、自民党のインターネット番組で)と反論するが、表だって盾突くのは少数派。菅義偉官房長官は「安倍首相はできる限り原発依存度を低減させていく方向だ。小泉さんは信念に基づいて発言している」と火消しに躍起だ。

 一方、脱原発陣営は小泉氏の“宗旨変え”に困惑しながらも、おおむね歓迎の姿勢だ。京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏は、こう評する。

「正直、小泉さんは嫌いです。小泉構造改革で弱者を切り捨ててきた。しかし、一連の発言はまっとう。とりわけ面白いのは、即ゼロと言い切ったところです。政財界、電力業界は無責任だと言う。私も散々言われてきました。それに対して小泉さんは明確に反論している。この論理が正しいのは明らかです」

 秋の園遊会での「手紙事件」で物議を醸したばかりの山本太郎参院議員も、こう語る。

「小泉さんは、自民党をぶっ壊すと言って日本を壊してしまった。だから、あまり期待できない。だけど原発ゼロ、さらに即時ゼロという点は国民感情をよく理解している。脱原発、脱被曝、そして反TPP。米国と一戦交えても、そこまで決断できるのか。注目しています」

AERA 2013年11月25日号より抜粋