和歌山県紀の川市で起こった小学5年生の森田都史(とし)君(11)殺害事件で、和歌山県警に2月7日未明に逮捕されたのは、近所に住む中村桜洲(おうしゅう)容疑者(22)――。近所の住人によれば、「事件直後から、近所ではあの“振り回し男”が犯人じゃないかという声が出ていた」という。

 中村容疑者は事件直後から和歌山県警にマークされていた。昨年夏ごろから、近所で目撃されていた“奇行”が理由だ。

「木刀、竹刀だけでなく角材、鉄パイプ、物干し竿などをブンブン振り回すので有名。家の庭でニタニタと外を見ながら、片手でぶるんぶるんとやる。剣道とかではなく、ただ振り回すような感じ。大柄で怖いし気持ち悪くて、彼がいる時は犬の散歩をやめていました」(前出の近所の住人) 

 近所に住む別の男性はこう語る。

「近所をぶらぶらしながら木刀のようなものを振り回し、奇声を出していた。そのうちナタのようなものまで持ち出して、近所の竹林で振り回して竹を切っている。『何をしているのか』と言っても、無視された」

 剣道のようなしぐさで通りがかりの住人を威嚇することもあり、恐れられていたという。

 
「以前から他人の家をのぞき込んだり、鍵をかけていないドアから勝手に入り込もうとしたりしていた。うちもそんなことがあり、何の用か、と聞くと、『おらぁ!』などとドスの利いた声を出し立ち去った。彼にものを盗まれたという人もいる。警察にも言ったがとりあわなかった」(同)

 住人らの証言によれば、中村容疑者は3人きょうだいの末っ子で、姉が2人いる。地域の区長を務める父は僧侶で、県内の仏教系大学の教授。研究テーマは密教で、弘法大師空海などに関する著書も複数出している。母は茶道と華道の教室を開き、民生委員も務める名士だ。小学校時代の同級生がこう語る。

「小学校の時は、当時流行(はや)っていたベイブレード(コマの玩具)でよく遊んだ。両親も丁寧な人で、しつけもきちんとしていた。最近、木刀を持って歩いているところに出くわして声をかけると、『俺はいつも木刀を持って散歩するんだ』と話していた」

 少年時代はおとなしい性格だったというが、高校受験に失敗。進学した工業高校を中退した後は引きこもりがちになり、仕事にも就かず、父親は周囲に「手に負えない」とこぼしていたという。

「高校の時に部活でいじめにあったのがきっかけで、不登校になったと聞きました」(別の同級生)

(取材班=今西憲之/本誌・一原知之、上田耕司、小倉宏弥、小泉耕平、野村美絵、牧野めぐみ)

週刊朝日 2015年2月20日号より抜粋