福島第一原発の事故以来、問題視されている東京電力の隠蔽体質。しかし一方では、その姿勢に対抗しようとする動きもあったようだ。東電の中で起こる対立を示すような資料が出てきたのだ。
 3月初めのことだった。東電幹部の一人から連絡があった。
「近く、(原子力安全・)保安院がおもしろい資料を発表するようです。といっても、週刊朝日さんがおもしろいだけですが」
 その資料とは、原発事故後に政府と東電が連日開いていた「統合会議」の議事録だった。そこで、週刊朝日の記事に触れられているという。
 指摘があったのは昨年9月6日と13日の議事録。9月6日は「福島第一原発 完全ルポ」掲載号の発売日だった。
〈週刊朝日の記事について、内容は極端な話を言えば間違っていないと自分は思っている〉
 会議でそう発言した福島第一原発(フクイチ)の吉田昌郎所長(当時)は、こうも付け加えた。
〈そもそもなぜこんな記事がニュースになっているのか、プレスに現場を公開しないからであると数ヶ月前から私は思っている。(中略)プレスに公開すれば良いではないかと考えている。本店(東電本社)の広報に改めて、広報戦略を考え直して欲しいというのが、1F(フクイチ)所長としての意見である。〉
 東電幹部はこう解説する。
「この議事録は発言の概要を記録したもので、吉田所長は実際には、『週刊朝日の記事は間違っていない。現場(フクイチ)に入って取材したものに違いない』と認めている。『現場は、爆発した原子炉建屋を毎日見ているから、慣れてしまっている。外部の人に見てもらって本当の状況を知ってもらうべきだ』という趣旨でした。ずっと、現場と本店は対立があったが、全体会議には政府も入っているので、さすがにそんな話は切り出せない。でも、このときばかりは吉田所長も強い口調だった」

※週刊朝日 2012年4月13日号