原発によるエネルギーを「低廉」だと位置づける政府。実際のところはどうなのか、検証した。
原発神話の重要な筋書きのひとつが「安さ」だった。経済性は原発推進の動力源に使われてきた。しかし東京電力福島第一原発事故で、神話は崩れた、はずだったのだが、再び政府は原発を「発電コストが低廉で、安定的な」ベースロード電源と位置づけ、再稼働へとひた走る。
確かに原発停止に伴い火力燃料の輸入が急増した。経済産業省は、2013年度のLNG(液化天然ガス)や石油などの燃料費は震災前より3.6兆円増えると予測し、「国富は流出し、貿易収支が悪化」と警告する。燃料費の抑制は緊急の課題だ。だが、目先の危機回避のために原発の発電コストは「低廉」と断言していいのだろうか……。
コストを再検証してみよう。民主党政権下の11年12月、有識者によるエネルギー・環境会議の「コスト等検証委員会」は、電源ごとに想定したモデルプラントで発電単価を出した。事故リスク対応費や税金の政策経費、環境対策費など従来は考えなかった要素も対象にしたところ、原子力の1キロワット時当たりの発電単価は、8.9円以上(12年に9円以上と修正)となった。