舛添要一(ますぞえ・よういち)1948年生まれ。東京大学助教授などを経て、認知症の母を遠距離介護した経験から政治家を志望。2001~13年参院議員(撮影/編集部・木村恵子)
舛添要一(ますぞえ・よういち)
1948年生まれ。東京大学助教授などを経て、認知症の母を遠距離介護した経験から政治家を志望。2001~13年参院議員(撮影/編集部・木村恵子)

 今後、日本が避けては通れない社会保障改革。その改革について、元厚生労働相の舛添要一氏は次のように話す。

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 社会保障の大胆な改革はムリといわれる。だが、最も重要なことは、お金は天から降ってはきません、ということ。それに尽きる。社会保障サービスを充実させたいなら税金や社会保険料などの負担を増やす。負担が嫌ならサービスは制限される。厳しいけれどそれをきちんと国民に説明して納得してもらう、政治のリーダーシップが必要だ。

 まず、増税。スウェーデンやデンマークなどは消費税が25%にもなる。EUに加盟するには、消費税にあたるものが15%以上というのが条件。私はちょうど今65歳で、同窓会などで年金の話がよく出る。

「本当は働きたいが、一定以上の収入があると年金が減らされたりなくなったりするから働かない」と話す人が多い。働く意欲を喪失させる制度はおかしい。

 いくら稼ごうが、満額の年金を全員がもらえると仮定して試算したところ、6千億円のコスト増になった。しかし、稼いだ人は所得税を払うのでコスト増は相殺される。外で働くことは認知症の予防になり医療費、介護費を抑えることにもなる。財務省からは非常識だと却下されるだろうが、私は年金を全員に満額支給するほうが、トータルコストは下がると思う。

 社会保障を考える時に、一番重要なのは、国民が政府にお任せではなく、支払った税金でどういう社会福祉サービスを得るのかを自分たちでデザインするという意識。ずさんな年金記録の問題は、もちろん政府や官僚側の問題が大きいが、国民が政府を信じ、任せていたから起きた。

 世界と比べて日本の現状は、明らかに「低負担高福祉」国。例えば、私が厚労大臣の時に最も医療費がかかった人は月1500万円だったが、その人の負担は8万円だけ。高額療養費制度で、上限以上は公的負担でまかなわれている。つまり1492万円は税金。

 日本に納税意識、コスト意識を生むために、例えばサラリーマンも全員確定申告をするようにしたらどうか。医療費は、いったん窓口で全額支払い、後に還付される仕組みにするのも一つの方法だ。

 大胆な改革をしなければ、超少子高齢社会で、社会保障制度を維持していくのはムリ、というのも現実なのだ。

AERA 2014年1月13日号秋元康特別編集長号より抜粋