安倍首相の要請などを受け、就活の解禁時期が4か月ほど後ろ倒しされることとなった。就活準備を建設的に行う学生にとってはより入念に準備をする期間が増えることになるが、一方でそうでない学生との格差が開くことにもなる。

 この「準備格差」が、企業側にとっては選びやすさにつながるようだ。近畿大学キャリアセンターの本荘栄二事務部長はこう明かす。

「実は企業の人事担当者に、『学生の就職指導をあまりしないでくれ』と言われることがあります。理由は学生の素が見たいから。準備期間が短い場合、学生が付け焼き刃のテクニックを身につけるための時間も減ります。企業側には優秀で意識の高い学生を見抜きやすくなるというメリットがあるでしょう」

 そこで、近畿大学は学生に早い段階からキャリアについて考える機会を与えている。今回の時期変更についても同様だ。入学式からまだ1カ月ほどの5月7日。新1年生が2クラス合同でキャリアについて学ぶ授業が行われた。キャリアセンターの田中正人課長代理が23人の学生たちに見せたスライドの最初に現れた題目はこうだ。

「就職活動スケジュールから大学生活を考える」

 企業名を知っているだけ書き出すなどのグループワークが始まると、皆いきいきと話し始めた。学生たちは、

「就職についてなんて今日初めて考えた」
「そもそも就職活動がいつ始まるかを知らなかった」

 という人がほとんど。授業に参加したことで、

「資格をとっておきたいと思った」
「何から始めていいのか悩んでいたが、留学やボランティアなどできることから始めたい」

 などと考えるきっかけになったという。

 では、短期決戦化する就職活動に備えて、すべきことは何なのか。近大の授業では、ビジネス誌やニュース誌を読んだり、ビジネス番組を見るだけで効果があると教えていた。

 キャリア教育に詳しい東洋大学の小島貴子准教授は言う。

「海外インターンなどで経験を積んだり、企業の人と話せるようなゼミに入ったり、とにかく社会人と関わる機会を作ることが大事です」

 キャリア教育に熱心な大学や教授に出会えた人はいいが、そうでない人の場合は、サークルやゼミのOBでもいいので、助言してくれる人を早めに見つけたり、就活の情報交換ができる仲間を作ったりすることも大事だ。

AERA 2013年5月27日号