『アップアップガールズ(仮) 1stライブハウスツアー アプガ第二章(仮)開戦』[DVD]
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『虹色モザイク / ENJOY!! ENJO(Y)!!』アップアップガールズ(仮)
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 ああもうそろそろ「今年を代表する漢字」をどこの誰だかが決める時期がやってきた。
 ぼくにとって、それは「(仮)」だ。2013年、自分の頭の中には常に(仮)が渦巻いていた。そしてこの「(仮)」という文字は、アップアップガールズという固有名詞と合体することによって、とてつもない安定感を発揮する。

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 アップアップガールズ(仮)。

「地球何億人の中から、この7人に出会えた奇跡」にふるえながら、そっと心に書き加えてみる。2013年、ありあまるほどの感動と感激を与えてくれたソウルフルなパフォーマンスを頭の中で反芻しながら、そっと書き加えてみる。

 アップアップガールズ(仮)。

 なんという揺るぎなさだろう。なんという強靭な土台を感じさせるネーミングだろう。(仮)という漢字が、こんなに頼もしく見えることはない。
 だって考えてみてほしい。フグ調理師(仮)のさばいた“てっさ”や“てっちり”を君は食べたいか? パイロット(仮)の操縦するジャンボジェットで海外旅行に行きたいか? 歯医者(仮)の持つドリルやスパナで虫歯をキュイーンとされたいか?
 そりゃあ、生死の境目を綱渡りするようなスリリングな気持ちは味わえるかもしれない。だが、ぼくはそんなフグ料理も飛行機も病院もいやだ。なのに、この(仮)という文字がアップアップガールズというカタカナと合体すると、たまらなく愛おしく感じられるのだから漢字というものは実に不思議だ。

 11月中旬から12月上旬にかけて、アプガは“七大都市(仮)化作戦”を敢行した。ようするに「アプガのことを、首都圏以外のひとにも広く知ってもらうべく、メンバー7人が7都市に分散してキャンペーンする。そして全国ツアーへつなげる」というプランだ。ぼくは11月27日にタワーレコード秋葉原店で東京担当の佐保明梨がおこなったイベントにしか行くことができなかったのだが、各地ともに大好評、大盛況だったという話はガンガン聞こえてきた。アプガの曲の持つ親しみやすさと面白さ、各メンバーの屈託のなさ、ゆかいなトークが一体になれば鬼に金棒、どの地域に住んでいるファンにも魅力は伝わるはずだ。

 秋葉原店のイベントには古川小夏と佐藤綾乃が助っ人として登場したが、これも実に爽快だった。その気になればフロントで喝采をかっさらえるふたりなのに、この日は佐保明梨がメインということで一歩うしろに下がって、緊張気味の彼女をさりげなく引き立てると共に、彼女と観客の両方を和ませていた。このように“主”と“脇”の切り替えがガッチリできるのも、またアプガの良さである。

 当初は硬い表情に見えた佐保明梨もイベントが進むうちにだんだんほぐれてきたようで、「人間試聴機になりたい」と口走って助っ人ふたりとコントを演じる頃には(古川や佐藤が、機械に扮した佐保のスイッチを押すと、佐保がアプガ曲をアカペラで歌いだす。まだライヴで披露されていなかった《虹色モザイク》もワン・フレーズ歌った)、広いタワーレコードのフロアにいつものアプガのライヴのような暖かい空気が広がっているのが傍目にもわかった。
 それにしても佐保明梨の歌声は伸びやかで耳に優しい。ソロでフルコーラス歌いあげた《あの坂の上まで、》には思いっきり胸を打たれた。とんでもなくすごい握力で握手をしてくる、あれほど鍛え抜かれた筋肉の持ち主が、こんなにやわらかくて、繊細で、そっと心を包むようなバラードで魅了してくれるのだ。いったい天はいくつ才能を与えれば気が済むのか。

 “七大都市(仮)化作戦”では各都市の担当者がそれぞれソロ・ナンバーを披露したのだが、古川小夏や佐藤綾乃や仙石みなみや関根梓や森咲樹や新井愛瞳のソロもぜひ生で聴いてみたかった。各人各様の歌声、フレーズ、リズム感が心を深く深く刺してくれるに違いないからだ。[次回12/25(水)更新予定]