神奈川県に住む40代の夫妻が、ラブラドール・レトリーバーのラブ(オス、6歳)の異変に気づいたのは今年8月だった。
「右目が充血している」
妻が先に気づき、かかりつけの動物病院に行って目薬や軟膏をもらった。だが2カ月たってもよくならない。紹介された眼科専門の動物病院で検査したところ、予想外の宣告を受けた。
「悪性腫瘍(しゅよう)だったんです。しかも、症状が進まないように右の眼球を摘出するよう勧められました。『顔が変わる』と、私以上に主人が動揺してしまって。でも、夫婦で話し合い、命を救えるならと決意しました」
ラブは11月半ばに手術を受けて右目を失った。転移は見つかっていないが、今後も定期的に検査を受け続けるという。
手の施しようがなかったというケースもある。
千葉県に住む会社員の男性(51)は昨年春、フラットコーテッド・レトリーバーのルイス(オス、当時11歳)が歩きにくそうにしているのに気づいた。最初の病院では問題ないと言われたが、夏に別の病院に連れていくと右脚の付け根にがんが見つかり、秋にあの世へと旅立った。
「大型犬としては長生きしたほうだと思うが、もう少し早く見つけられれば助けてあげられたかも」
男性はそう言って悔やむ。
ほかの病院から紹介された動物の2次診療を手がける麻布大附属動物病院(神奈川県相模原市)には、腫瘍科の診察日になると犬や猫を連れた飼い主が50~60人来る。
診察室をのぞくと、信田卓男病院長が日本テリア(メス、13歳)の胸の腫れを診察し、飼い主にこう説明していた。