2014年夏の注目のドラマは何か? ライター諸氏のおすすめ作品を見ていこう。

 裏番組の「若者たち2014」(フジテレビ系)を抜いて、高視聴率でスタートした「ST 赤と白の捜査ファイル」(日本テレビ系、水曜)は、評価が高い。

 法医学のスペシャリストで対人恐怖症の赤城左門(藤原竜也)と、キャリア警部の百合根友久(岡田将生)のテンポの良いセリフの応酬も見応えがあり、飽和状態の刑事ものドラマでも、群を抜いた出来だ。

「変人ながら愛すべきキャラクターがきちんと作りこまれており、連ドラの前にスペシャルドラマとして昨年放送された時から、男女ともに支持を得ている作品です。注目は、朝ドラ『花子とアン』で、はなの幼なじみで純朴な朝市を演じる窪田正孝。『ST』ではまるで違う、男臭くて寡黙なキャラ。キレのいいアクションも披露します。次にブレークするのは彼ではないでしょうか」(テレビ誌ライター)

「半沢直樹」や「ルーズヴェルト・ゲーム」を生み出したTBS系日曜夜9時枠の「おやじの背中」も、忘れてはならない。

「1話ずつ違う脚本家で競わせるという試みで、興味深い作品です」(テレビコラムの連載を持つライターの吉田潮氏)

 田村正和と松たか子、役所広司と満島ひかりなど、親子を演じるキャストも豪華だ。

 
「山田太一さん脚本の回で、渡辺謙さんと東出昌大さんが共演します。謙さんの娘の杏さんと交際が噂されている東出さんとの見事すぎるタイミングでの共演で、話題性も抜群。局内ではさすがに誰も触れられませんが(笑)」(TBS関係者)

 ストーリーはさておき、一味違う見どころがある作品もある。

 上戸彩が不倫妻を演じるということで放送前から話題だった「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(フジ系、木曜)。

 なんといってもそろえた男性俳優陣が、ある意味すごい。不倫相手の高校教師役は、「ガラスの家」(NHK)で、父の再婚相手と禁断の恋に落ちる男を演じて人気上昇中の斎藤工。画家役には、ワイルドさを前面に押し出した北村一輝。初回は吉瀬美智子演じるセレブ主婦の浮気相手の「出会い系男」として伊藤英明まで登場。これでもかというほど、男の色気ムンムン俳優のオンパレードなのだ。おまけにエンディング映像では斎藤と北村の際どすぎるヌードまで出てくるサービスぶり。内容はどうあれ、“お好き”な女性なら楽しめそうだ。

 そして、“おネエ”映画ライターのよしひろまさみち氏が、

「ものすごいものを作りましたね。今期で一番、見て得した感がある作品です。さすがドラマのTBSね」

 と興奮するのが、天童荒太原作の「家族狩り」(TBS系、金曜)だ。児童ケアセンターの児童心理司の氷崎游子(松雪泰子)は認知症の父と、その介護に疲れたパチンコ依存性の母と暮らす。警視庁捜査一課の馬見原光毅(遠藤憲一)は、息子を事故で失い、心を病む妻と絶縁状態の娘がいながら、DV被害者として出会った女性とその息子の世話をしている。虐待された子供や、リストカットをする女子高生など、重苦しい登場人物が続々と出てくる上、一家心中事件が連続して起こる。

 
「狂気をはらんだ松雪泰子の配役も、説得力があって正解でした。生臭い薄気味悪い話ではありますが、それだけでは終わらせないところがちゃんとあります。家族を持つことにすごく不安を持っている伊藤淳史と、今流行りの“マイルドヤンキー”で何も考えずに家族を作っちゃう北山宏光の登場で、いいバランスが取れています」

 と、吉田氏も絶賛する。ただ、どんなに内容が良くても視聴率が比例するかというと難しいところ。

「1話と2話は、苦戦しましたが、それは裏でジブリの映画とぶつかってしまったから。想定の範囲内です。完成度は高いので、回を重ねていくごとに視聴者がついてくるとみています」(前出のTBS関係者)

 いざ始まってみると、「HERO」(フジ系)スタートダッシュに成功、大本命の「若者たち2014」(フジ系)がまさかのつまずきを見せた夏のドラマ。あるテレビ局関係者はこう苦笑いする。

「製作費をかけて俳優を集めても、いい数字をとるのは本当に難しい。業界では、号泣会見を流すたびに視聴率がはね上がる野々村竜太郎前兵庫県議は、8%は取れる“10年に一人の逸材”なんて言われています」

 テレビ界の本当のHEROはあの男だった?

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋