今期のドラマは地味で、リバイバルと続編だらけと言われてきたが、その真相は? 夏のドラマを徹底解剖した。

「HERO」と同じフジ系でも、気合が入りすぎて空回りしてしまった感があるのが、「若者たち2014」(水曜)だ。

 妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、柄本佑、野村周平に、吉岡秀隆、蒼井優、長澤まさみ、橋本愛など、旬な演技派俳優たちを今期ドラマの中で最も豪華にこれでもかと起用し、演出は「北の国から」の杉田成道氏ら。初回は12%台とまずまずの滑り出しだったが、第2話はまさかの1ケタ台に急下降した。1966年に放送されたものをリメークした現代版だが、

「豪華キャストがきょうだいとして古い家に暮らし、ちゃぶ台を囲んで演技がかった大声で討論。そこからなぜかプロレスに発展する。旬の役者たちの“競演”を楽しみにしていた視聴者たちは、ポカンとしてしまいますよ」(テレビ誌ライター)

 初回は、頑固親父のような長男を演じる妻夫木が、なんとプロレスのリングに上がって、殴られても立ち向かうシーンがクライマックスとなった。

「いま、“熱き血潮”みたいなのは流行らないでしょう。演出に郷愁を感じる人もいるかもしれませんが、そこをくすぐりつつも、平成の世の中に多少リンクしないと。結婚を拒絶していた妻夫木が、プロレスのリングに上がって、殴られて、血だらけになって(恋人役の)蒼井優に『結婚しよう』と言うなんて、おいおい、ですよ。もっと“ひと悶着”をちゃんと描いてほしかったですね」(テレビコラムの連載を持つライターの吉田潮氏)

 残念ながら第2話でも、出所してきた弟(瑛太)と兄(妻夫木)がプロレス技をかけ、殴り合うシーンがもれなくついてきた。問題の解決法が毎度プロレスと殴り合いでは、演技派俳優たちの持ち腐れではなかろうか。

 
「今の若い人は夢がないと言われているでしょう。夢を見させてほしいテレビで、現実をやられても……。かつて野島伸司脚本の悲惨な現実を映し出したドラマが当たったのは、世の中が浮かれてハッピーな時代だったから。今の若者たちの不幸にスポットを当てて、誰が喜ぶんだろうって思いましたね」(“おネエ”映画ライターのよしひろまさみち氏)

 実力派がそろった作品だからこそ、今後の巻き返しを期待したい。

 同じように、若者の描き方を間違えていると言われるのが「GTO」(フジ系、火曜)だ。

 こちらも、98年に反町隆史主演で爆発的人気を誇ったキラーコンテンツのEXILE・AKIRA版。よしひろ氏は「1話を見てひっくり返りそうになったわ」と辛辣だ。

「かつてはGTO出身の俳優はブレークする、という登竜門のようなドラマだったのに、それはもうないでしょうね」

 生徒役には、朝ドラ「ごちそうさん」でヒロインの娘役を演じた松浦雅や、実写版映画「魔女の宅急便」の小芝風花など、注目の若手を集めてはいる。が、先の吉田氏も1話で見るのをやめることにしたとか。

「脚本がひどすぎます。表面のポイントを数珠つなぎにしているだけで、物語が全然理解できなかった。若者にしか聞こえない“モスキート音”ってありますよね。今作には、私みたいな中年には見えない“モスキート映像”みたいなのがあったのだろうかって思いましたよ」

「整形」「読者モデル」や「スマホ」といった今風なものは出てくるが、クラスメートの整形前の写真を特大垂れ幕にまでしてさらした生徒たちが、あっさり泣いて仲直りするなど、大人どころか高校生にも理解できないのでは。

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋