クラシックの音楽学者がアメリカ人のジャズ・ピアニストにジャズの見解について質問。あくまで音楽そのものに即して、モダン・ジャズの巨匠6人の音楽の特質を分析する。
 ジャズ・ピアノ史上最高のテクニシャンとして名高いアート・テイタムの豊かな和音には、実は陰影を添える不協和音が多く含まれている。チャーリー・パーカーは、テイタムの演奏するハーレムのバーで、彼の音楽がわかるまで皿を洗い続けた。ジャズには楽譜がないので、現場で他人のスタイルを身につけ、一回で全てを覚えなければならないのだ。パーカーに雇ってもらったマイルズ・デイヴィスには、転調やサイド・スリッピングや裏コードをどれだけ使ってもついていく頭の良さがあった。息がもれるような吹き方をするマイルズのトランペットは、ジョン・コルトレーンのぶっきらぼうな音色と共鳴。ヴィブラートが多く、「白人っぽい」「スウィートな」音楽とは対極にあり、黒人たちの共感を呼んだ。
 そんな調子で対話は自在に続く。主だった譜例をストレンジ氏が実際にピアノで弾き、ネットで流しているのが新しい。

週刊朝日 2014年10月31日号