報告書では、長野五輪でスタジオ6による集票活動があったかどうかは不明と強調しつつも、BBCが04年に放送したある報道番組の内容が引用されている。

 それは、BBCの記者がロンドン五輪招致を目論む企業の社員を装い、ゴラン・タカチ氏に接触したものだ。タカチ氏は「すべてはお金につきますね」「いま、ここにある(IOC委員のリストの)うちで、私が接触できる人を言うから」とほのめかし、30人以上のIOC委員の名前を上げたという。記者が取材であることを明かすと、タカチ氏は「自分たちの考えていることを本当にやったら、招致活動のルールに違反するのだよ、ということを披瀝するためのものだった」「汚職の現場にワナを仕掛けるためのものだった」と釈明していた。

 一方、スタジオ6をめぐっては、こんな資料も残っている。この問題などを調査するためJOCは99年、「IOC問題プロジェクト」を発足。そのチームの委員のなかに、竹田恒和氏(事業・広報専門委員長)の名前がある。99年2月7日、JOCが招致委員会にヒアリングした際、竹田氏はスタジオ6に対する報酬について「成功報酬はいずれにしても問題はある」と発言している。

 東京2020大会では、その竹田氏自身が招致をめぐるワイロ疑惑の渦中にある。招致委員会からシンガポールのコンサルタント会社に支払われた約2億3千万円が、IOC委員だったラミン・ディアク氏と息子パパマッサタ氏を通じて開催都市決定の投票権を持つIOC委員への買収工作に使われた疑いがあるとして、フランス司法当局はJOC会長だった竹田氏を聴取している。

 長野五輪では、結果的に多くの疑惑が闇に葬られることになった。後藤さんは当時の経験から、今回の東京五輪についてこう指摘する。

「東京五輪でも必ず帳簿などの内部資料は存在します。公金だから残さなければならないものです。現在のJOCは長野の経験を引き継いでいますから、体質は変わっていないとみています」

(AERA dot.編集部 岩下明日香)

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