統一教会2世の外山道子さん=仮名=(撮影/米倉昭仁)
統一教会2世の外山道子さん=仮名=(撮影/米倉昭仁)

手製の銃を発砲し、安倍晋三元首相を殺害した山上徹也容疑者(41)。母親が入信する「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に「人生をめちゃくちゃにされた」と激しい恨みを募らせ、同団体と安倍氏の関係を知って逆恨みしたことが動機の一端とされている。旧統一教会は過去に多くのトラブルを起こしたが、信者の子どもである「2世」の実状はあまり知られていない。AERA dot.は両親が統一教会信者という家庭で育った女性を取材し、問題となっている高額献金システムや、「2世」がいかに精神的に追い詰められているかなどを聞いた。

【写真】統一教会信者がつけていた「献金達成表」のグラフ

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「私は父親も母親も統一教会の信者です。2人は教団によるマッチングで結婚して、私が生まれました。いわゆる『祝福2世』です。『祝福2世』はサタン(非信者)の血統が混じっていないことから、ずっと『あなたは神様の子だから』と言われて育ちました。そして外の世界については『サタンがはびこる悪い世界だ』と教えられてきました。だから私もずっと、教会の外の世界は怖いものだ、という価値観で生きてきたのです」

 外山道子さん(仮名)は、物心つくときから両親が信仰する宗教の価値観の中で育った「宗教2世」である。その宗教こそが、旧統一教会だった。年齢は30代後半で山上容疑者とそれほど変わらない。両親が教団に多額の献金をしていた、という点でも山上容疑者とは共通点がある。

 外山さんには忘れられない記憶がある。小学生のころ、人々の不安をあおって壺(つぼ)などを高額で売りつける旧統一教会の「霊感商法」が大バッシングを受けていた。メディアもこぞって追及していたが、外山さんは子どもながらに、マスコミに大きな怒りを覚えたという。

「母親が『マスコミは根も葉もないうわさでお父様のことを非難して、ひどい』と言って、毎日泣いていたんです。あのころ、私は母親のことが大好きだったから、お母さんをこんなに泣かせるなんて、マスコミというのはなんて悪い人たちなんだと思いました。統一教会が正しいかどうかよりも、母親を泣かせたことが許せなかったんですね」

 ちなみに「お父様」というのは旧統一教会の創始者、文鮮明(ムン・ソンミョン)のことである。

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両親は「家一軒分」のお金を献金