日本郵政の増田寛也社長
日本郵政の増田寛也社長

 日本郵便が全国郵便局長会の要望で買ったカレンダーは「郵便局長の見つけた日本の風景」と題した壁掛けタイプで、局長が撮影した風景写真が使われている。カレンダーは外部の制作会社から購入しているものの、掲載写真を選ぶ全国郵便局長会主催のコンテストの注意事項には「応募作品の著作権は全国郵便局長協会連合会に帰属する」「連合会がカレンダー用写真として有償で貸し出す場合がある」と記されている。

 全国郵便局長協会連合会は役員や所在地が全国郵便局長会と重なっており、経費の一部が局長会側に流れていた可能性がある。全国郵便局長会には11月中旬、カレンダー経費の一部を収入として得たかどうかを尋ねて取材を申し込んだが、回答は得られていない。

 想像してみてほしい。

 会社の幹部らが、自分たちの写真を使ったカレンダーの購入を会社に働きかけ、支出された億単位の経費の一部が、幹部らが役員を務める団体に流れるとしたら……。

この構図は、郵便局長会が局長らに郵便局舎となる物件を自ら保有するよう促し、不動産の取得資金を貸し付けることで、日本郵便が支出する店舗賃料を元手に利息収入を稼いでいる構図とも似ている(参照)。

 非上場の同族経営会社ならいざ知らず、日本郵政は歴とした東証一部上場企業だ。役職員の関連先に利益を融通するような取引には注意を払うことが、上場企業の経営には求められるはずだ。

 八田進二・青山学院大学名誉教授は、こう指摘する。

「物品購入のための経費が郵便局長の関連団体に還流していたのなら、支出した経費が過大ではなかったかという疑念が浮かぶ。還流はあったのか。あったならいくらか。頑なにそこだけ隠せば疑惑を招くだけで、不祥事に対する透明性ある対応とは言いがたい」

 こうした指摘に日本郵政グループが耳を傾ける様子はない。

 日本郵便の衣川和秀社長は12月22日の会見で、「十分に承知していない」「著作権料の支払いは一般の商行為として特異ではない」「調査は考えていない」などと繰り返した。局長会幹部を兼ねる社員らに尋ねればすぐわかりそうなことを、頑なに答えずに隠し通した。

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増田社長も追認