現在も募集中の時代祭は「下着(パンツ、シャツ)は白か肌色を着用」や「わらじズレ防止の為、ばんそうこう4~5枚持参」など、知らないと痛い目を見そうな注意書きも出してくれている。

 祭の特性から「留学生不可」もあり、「可」の場合でも「日本語が堪能なこと」「アジア人」などの条件がつく。

 記憶にあるのは、祭バイトは新入生に人気の定番バイトだったということ。ほとんどの学生が知っていたし、友人5人に聞いてみたら3人は経験者だった。三大祭り制覇の皆勤賞もいれば、2年連続参列のリピーターもいた。ところが、最近は応募する学生が減っているという。実際、現役学生に聞いてみても認知度は半分ほどで、経験者も10人聞いてやっと1人発見。アルバイトを仲介する京大厚生課によると「年々応募は減ってきており、近年では稀に欠員が出る場合もある」そう。

 2000人の行列のうち約400人が学生の時代祭では、数年前に直前まで定員が埋まらなかったことがあったという。学生にこだわる必要はないのでは…と思うが、時代祭を挙行する平安神宮に聞くとこんな答えが返ってきた。

「アルバイト枠は学生の街である京都に来た学生さんに文化と歴史に触れてもらい、京都を離れた後でも役に立ってもらえればというとこから始まった。学生時代にいい思い出を作って欲しいとの思いがあるので、人材派遣会社に頼みますというわけにはいかない」

 つい最近、文科省とスポーツ庁が全国の大学などに対して東京五輪期間中の授業や試験の日程変更を求める通知を出したところ、“学徒動員”と不興を買っていたが、京都の祭でそんなブーイングは起こらないはず。

 友人は、「単純作業で非日常を経験できて、まあまあな実入りでお得。友だちとワイワイ参加するのがオススメ。京都に住んでたらやるでしょ!」と楽しそうに思い出していた。

 確かに、格式高い祭でカメラを向けられながらコスプレというのは貴重な体験。乱れがちな学生ファーストの理念も、ここではきちんと伝わっていそうだ。

「祇園祭は八坂神社で鰻弁当を食ったことだけ覚えてる」という友人がいたが、2年前にバイトをした現役学生も鰻弁当の接待を受けたそうで、「友だちと“1人暮らしで鰻なんてなかなか食べられないよね”と言いながら食べた」と教えてくれた。

 日本を代表するような歴史ある祭りが年に3回も行われているのは、恐らく京都くらいだろう。そして、その伝統の担い手は京都で代々暮らす人はもちろん、外様住民にも開かれている。

 天野教授はこう力説する。

「昔の人がつくった寺や神社だけに頼っているのではなく、それを支えていく人々の力も京都の魅力。次の世代まで支えていこうとする人の心は、京都が世界に誇る文化ではないでしょうか」

 都として1000年以上栄え、今は世界中から観光客を呼び込む京都の底力はやっぱりあなどれない。(小林幸帆)