富山県小矢部市は「五郎丸」だらけだった…
富山県小矢部市は「五郎丸」だらけだった…

 ラグビーW杯のベストフィフティーン選出、南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」のレッズ(オーストラリア)入り……。W杯が終わっても、日本代表・五郎丸歩(ヤマハ発動機)の“快進撃”は続く。人気にあやかった「五郎丸ブーム」も健在で、ファンは確実に増えている。そんななか、「五郎丸」という地名が残る富山県小矢部市を訪れてみた。

 最初に訪問したのは、宝暦2年(1752年)に創業した和菓子店・薄氷(うすごおり)本舗 五郎丸屋。薄焼きせんべいに和三盆糖をコーティングし、不定形に割れた氷の美しさを表現した「薄氷」が主力商品である。加賀藩主の前田家を通じて、幕府にも献上されたとされる。16代目の渡邉克明さんはW杯期間中、都内にある百貨店の催事に出店し、店名を見た年配の男性から「おっ、旬だね!」と言われたそうだ。

 五郎丸屋と書かれた包装紙や紙袋入りの薄氷を手土産や贈り物にすると、県内外から反響は大きい。初対面ながら話が弾むケースも多く、五郎丸効果は相当なものであると実感したらしい。

 ところで五郎丸屋、ひと足早く海外進出を果たしている。経済産業省は「クールジャパンによる地域活性化推進」として、“世界にまだ知られていない、日本が誇るべき優れた地方産品”を選定、海外展開を支援している。この取り組みは「The Wonder 500 TM(ザ・ワンダー・ファイブハンドレッド)」と呼ばれ、今年8月に対象となる商品500点を発表、薄氷を現代風にアレンジしたカラフルで円形の「T五(ティーゴ)」が選ばれた。

 2013年には観光庁が「世界にも通用する究極のお土産フォーラム」を開催し、旅のきっかけにつながる「究極のお土産」を発掘するにあたり、「T五」が選定を受けている。「五郎丸選手は海外に行ってしかるべきですよ。活躍を願っています」という渡邉さん、世界進出で先陣を切る自負がにじむ。

 「五郎丸」という地名は、富山と石川の県境に近い国道359号沿いに残っている。渡邉さんから「小矢部市内には五郎丸川もありますし、五郎丸さんという名字の方もおられますよ」と聞き、「五郎丸さん」を訪ねてみた。

 その名も「五郎丸歯科クリニック」。院長は五郎丸知明さんという。小矢部市内には五郎丸という姓の本家と分家があるらしい。W杯期間中は何度、患者さんから「ご親戚ですか?」と聞かれたことか……。五郎丸院長、まんざらでもなく、応援には一層、熱を入れている。

「W杯が終わって『五郎丸人気』が終息するかと思いきや、ますます大注目ですね。親戚ではないけれど、もはや人ごととは思えなくなりました。世界を舞台に活躍されることを願っています」
 
 「五郎丸人気」はとどまることを知らない!

(ライター・若林 朋子)