景気回復は実感できず…。
景気回復は実感できず…。

 2015年もあと2カ月と少し。安倍政権はアベノミクスの成果をうたっているが、大半の人は景気回復を実感していないのではないだとうか。日本のみならず世界規模で近未来の経済動向を予測した『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』の著者であるエコノミストの中原圭介氏は、そのカラクリを次のように解説している。

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私もいろいろなメディアを通して「アベノミクスの恩恵を受けているのは、全体の約2割の人々に過ぎない」と訴えてきましたが、大手新聞各社の世論調査でもおおむねそれに近い結果が出ているようです。

なぜ2割なのかというと、大ざっぱに言って、富裕層と大企業に勤める人々の割合は2割くらいになるからです。要するに、残り8割の人々は現政権の経済政策の蚊帳の外に置かれてしまっているわけです。

国民の生活水準を考える時に、重要なのは「名目賃金」ではなく「実質賃金」です。このことを否定する方は、この記事を読んでいるみなさんの中にはおそらくいないでしょう。

日本経済を見渡してみると、2013年のGDPは2.1%増、2014年は0.9%減と二歩進んで一歩下がるような推移をしているものの、実質賃金の低下はその悪循環からまだ抜け出すことができていません。2012年に99.2だった実質賃金指数(2010年=100)は、現政権誕生後の円安インフレや消費増税によって、2013年には98.3、2014年には95.5と下落を続け、2015年になっても悪化が止まっていないのです。

2015年は原油安という追い風が吹いているにもかかわらず、むしろ実質賃金が年初と比べて下がっているというのは、アベノミクスの大規模な金融緩和に伴う円安によるものです。

確かに、実質賃金は2015年7月に2年3カ月ぶりに前年同月比で0.5%増加し、10月22日の報道では8月も0.1%増と2カ月連続のプラスとなりました。そこで政府は、実質賃金の「前年同月比の上昇率」を強調しながら、アベノミクスの効果をクローズアップしてくることになるでしょう。

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